バイクに乗るのに欠かせない「ガソリン」。連日報道されていますが、ガソリンの高騰が止まりません。このブログを書いている2023年8月末現在、資源エネルギー庁が発表しているレギュラーガソリンの全国平均価格は185円。実に15週連続値上がりしています。日本政府はようやく重い腰を上げ、「トリガー条項」を発動させるか否か議論していますが、円安ドル高が今後も続くかと思うと “焼石に水” 感があります。
とはいえ車やバイク(電気自動車以外)を動かすには必要不可欠な「ガゾリン」のことを、皆様どれだけご存知でしょうか?今回は、「ガソリン」にまつわる様々な事由を綴っていきたいと思います。
石油はどこからやってくる?
・日本の年間石油輸入量
ガソリンは石油(原油)を生成したモノです。日本国内における石油の年間産出量は約520千kl。対して日本の年間石油輸入量は173,044千kl(2019年)なので、実に99.7%が輸入に頼っています。それでは日本はどこの国から石油(原油)を輸入しているのでしょうか?
1位がサウジアラビアの34.1%、2位がUAE32.7%、3位がカタール9.3%、4位クェート8.9%とベスト4を全て中東勢が占め、全体の割合も85%が中東からの輸入です。日本の石油輸入が如何に中東に依存しているかよくわかるデータですね。このデータは2019年なので、2023年現在はロシアからの輸入はないものと思われます。
・石油の輸入量は年々減少している?
しかしながら興味深いデータがあります。下記のデータを見ると、日本の石油輸入量は2006年を境に、年々減少しているのです。ハイブリット車など燃費の優れたエコカーの台頭で日本国内の石油消費量が下がったのが、主な要因とされています。ちなみにエコカー減税が始まったのが2009年です。
石油からどうやってガソリンは生成される?
中東諸国から日本へタンカーで運ばれてきた石油は、製油所にある原油タンクに移されます。ここで石油を加熱して液体から気体にし、冷やして再び液体にする「蒸留」という工程が行われます。液体になる温度の違いで、下記のように様々な石油製品ができます。
・石油からできる製品の数々
- 35℃以下:LPガス
- 35~180℃:ナフサ(ペットボトルなどの原料)・ガソリン(車やバイクの燃料)
- 170~250℃:ジェット燃料油・灯油
- 240~350℃:軽油(トラック、中型までの船、小型重機などの燃料)
- 350℃以上:重油(大型タンカー、大型重機、ボイラーや発電機などの燃料)
ガソリンとは?
ガソリンはイギリス英語ではPetrol、アメリカ英語ではGasolineと言われ、沸点が30~220℃の範囲にある石油製品の総称。ガソリンは主に炭素数4から10の炭化水素で構成されており、密度は783kg/m3であります。揮発性が強く、特異の臭気をもち、引火点は-40℃以下で、常温で火をつければガソリンは燃える危険物です。
ガソリン本来は水に溶けない無色の液体ですが、軽油や灯油と区別をするためにオレンジの着色料が付けられています。ガソリンの用途は99%が、自動車やバイクの燃料です。それ以外には、溶剤、塗料、ドライクリーニング(染み抜きなど)にも使用されています。
レギュラーとハイオクは何が違う?
オクタン価
レギュラーとハイオクは同じガソリンですが、オクタン価が違います。
オクタン価とは”異常燃焼の起こしにくさ”を表す数値のことです。レギュラーよりオクタン価が高いハイオクは、異常燃焼を起こしにくく、ノッキング現象を起こしにくいガソリンです。別の言い方をすれば、高性能車の方が混合気の圧縮比が高く、シリンダー内の温度も圧縮比に伴い上昇するので、ノッキング現象が起きやすくなります→その為に、高性能車はハイオク指定になっています。
逆に圧縮比が高くない、国産車・普通車は、ノッキング現象が起きにくいためにレギュラーガソリンを使用する方が良いと言うわけです。
レギュラーとハイオクの特徴を下記にまとめてみました。
ガソリンの種類 | オクタン価 | 適合車種 | 燃費 | 価格 |
レギュラー | 89以上 | 国産車(高性能は除く)・普通車 | 関係無 | ハイオクより10円安い |
ハイオク | 96以上 | 輸入車・高性能エンジン車 | 関係無 | レギュラーより10円高い |
ハイオクの方がレギュラーより10円高い理由は、オクタン価を高くするために添加剤を入れているからです。またハイオクは添加剤の分だけ燃えかすも多く出るのですが、燃えかすを洗浄するための洗浄剤も含まれています。
以上のことから、レギュラーとハイオクは別物と考えられます。輸入車・高性能エンジン車・スポーツタイプなどのハイオク指定車には、ハイオクガソリンを入れましょう。また国産車・普通車にはハイオクではなくレギュラーガゾリンを入れましょう。もし車種によってわからない場合は、ディーラーや代理店に問い合わせて下さい。
ガソリンにかかる税金
日々値段が変動するガソリンですが、その中でガソリンにかかる税金をご存知でしょうか?今回はよい機会だと思うので、同じく税金がかかる軽油・灯油と比較しながら見ていこうと思います。
3つの油にかかる税金
ガソリン:ガソリン税53.8円+石油税2.8円=合計56.6円 / L
軽油:軽油引取税32.1円+石油税2.8円=合計34.9円 / L
灯油:石油税2.8円 / L
ガソリンスタンドにおける販売価格だけをみると、軽油の方がガソリンより安いと思われているかもしれませんが、実際は税金がガソリンに比べて21.7円 / L安いのです。軽油は、トラックや軽貨物車など業務用が多いため、ガソリンより税金が安く設定されています。そして灯油は主に冬場の暖房に使うため、石油税以外かからなくなっています。
・消費税もかかる
しかしながら、燃料にかかる税金はこれだけではありませんよね。はい、ここに消費税10%もかかります。先日のツーリング後、ドゥカティ848に入れたガソリンの明細は、
11.53 L × ハイオク180円 =2,075円+外税消費税208円=2,283円 でした。
・ガソリン代の1/3以上が税金?
ガソリン&石油税56.6円×11.53L=653円に消費税208円払っているので、税金の合計額は861円です。つまりガソリン代の38%は税金ということになります。我々は想像している以上に、燃料に税金を払っているのです。
・二重課税
そしてガソリン税&石油税という税金にも消費税をかけているので、これは完全なる「二重課税」と言われています。この二重課税を撤廃せよという議論はずっとされているのですが、無くなるどころか消費税が段々上がってきているので、増え続ける一方です。
一方ガソリンより安い税金の軽油ですが、道路を走らない船舶、重機、農耕器具などにも使われています。この場合軽油引取税はかかりません。つまり、ガソリンも含め道路を走る燃料にのみ税金をかけているということです。政府はガソリン税、軽油引取税は道路財源であると言っている訳ですね。
トリガー条項とは?
最近ニュースや新聞でよく聞く「トリガー条項」とは何なのでしょうか?
トリガー条項とは、総務省が発表する小売物価統計調査で、レギュラーガソリンの平均小売価格が1リットル当たり160円を3カ月連続で超えた場合、ガソリン税の上乗せ分(25.1円)の課税を停止。その分を減税する仕組みです。発動後、1リットル当たり130円を3カ月連続で下回れば、税率を元に戻すとのこと。
そこで3ヶ月連続でガソリン小売り価格が160円を超えているか、調べてみました。
丁度6月から160円以上になり、8月末で3ヶ月が経過することになります。と言うことは9月からトリガー条項が発動され、ガソリン価格が25.1円安くなる事を切実に期待します。
しかし日本政府や財務省は、上乗せ25.1円・年間2兆円もの財源がなくなるとなると、一筋縄では行かない気もします。ここままではレギュラー200円になりそうですか、どうなることでしょうか。
バイクの燃費を向上させるには?
私は、バイクに乗る時は、燃費??そんなの関係ねぇ派でした。実際ドゥカティ848とBMW・R100RTはハイオク仕様で燃費があまり良くないバイクです。
しかしながら昨今のガソリン価格高騰を受けて、少しでも燃費改善できる方法があれば実行したいと思うようになりました。燃費を良くする為にポイントとなるのは、摩擦・効率・重量です。それを踏まえて、この章では比較的実践しやすい燃費改善方法を紹介していきます。
・タイヤの空気圧(摩擦)
まず今すぐにでもできるのが、タイヤの空気圧を適正にすることです。バイクのパーツ中で唯一地面と接しているタイヤの摩擦抵抗を少なくしてやると、燃費が良くなるのは必然です。
・エンジンオイル交換(摩擦)
4ストローク車のエンジンオイルは、シリンダー内のピストン・クランクシャフト・カムシャフトが高速運動をするのを潤滑にすることが、主な役割となります。綺麗なオイルの方が、ピストン運動がより潤滑になる(摩擦が少なくなる)ので燃費向上につながります。また粘土の少ないオイルの方が摩擦抵抗が少ない(柔らかい)ため、燃費は向上します。
・エンジンオイル添加剤(摩擦)
エンジンオイルに添加剤を入れることによって、オイル交換同様にピストンが潤滑に動き、燃費向上につながります。オススメのオイル添加剤はオメガオイル909です。特にエンジンオイルが汚れてきた時には、効果があります。そしてこのオメガ909はシフトも入りやすくなります。
・ガソリン添加剤(効率)
添加剤も色々販売されていて、ガソリンタンクに入れる添加剤もあります。ガソリン添加剤の役割は、エンジン内部の汚れ燃えカス(カーボン)に対して、洗浄効果を発揮し、エンジン性能を回復させルことです。つまり、タンク内をクリーンにして燃焼効率を上げるので、燃費が良くなる訳です。有名どころだと、ワコーズのフューエルワンなどがあります。
・チェーンメンテ&交換(摩擦)
タイヤを動かす動力源となるのがチェーンです。チェーンの張り調整及び清掃をこまめにして置くことが、摩擦抵抗を抑えることにつながります。また古くなったり錆のあるチェーンは、早めに交換することが、燃費改善に繋がってきます。
・渋滞を避けて、高速巡行する(効率)
渋滞というのは低速のストップ&ゴーが続くことを意味します。これは、バイクに限らず乗り物は停まっているものを動かすのに1番パワー(つまり燃料)を要します。逆に60キロくらいの一定スピードで、停まらずに巡航している方が、燃料消費量は少ないです。燃費を向上させるには、できる限り混んでいる道や時間帯を避けてバイクに乗るということが重要ですね。
・バイク&ライダーの軽量化(重量)
バイクの重量は、ダイレクトに燃費に関わってきます。同じ排気量とエンジンで、150kgと200kgのバイクを比べると、圧倒的に前者の150kgの方が、燃費が良いです。バイクの軽量化ばかりに目が行きがちですが、ライダーの軽量化こそ最も簡単にできる対策だと思います。痩せることによって、カッコよくバイクに乗れる&燃費も伸びるので一石二鳥です。
まとめ
今回は、バイクの燃料である「ガソリン」について様々な角度から言及させて頂きました。 1~6章までは、産油国との外交・為替・国の財源である税金などが絡むため、非常に難しいテーマです。しかし我々は車やバイクに乗る以上、ガソリンを購入し税金を払っています。そのガソリン価格の内訳がどのように形成され、変動するか知っておいて損はありません。とは言え、ガソリン価格の高騰は何とかして欲しいものです。
7章で述べた燃費改善に関しては、細かい話かもしれませんが、ライダー個人でもできることです。本当はガソリンの価格や燃費を気にせずに、気持ちよくバイクに乗りたいのですが・・・。
しかし将来的には、燃料を要する内燃機関がなくなり、環境に配慮した電気や水素で動くバイクにとって変わっていくでしょう。ガソリン車を愛する筆者としては寂しい限りですが、今のうちに愛車にたくさん乗って楽しんでおきたいと思います。