今こそ本田宗一郎 「本田宗一郎語録」より

皆さん、こんにちは!これまで2回に渡ってご紹介してきました。

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自動車業界が100年に1度の変革期と言われる今日、最後発として参入したホンダの原点はどこにあったのか?その後、ホンダらしさを作り上げたものは何だったのか?

今回は、「本田宗一郎語録」をもとにご紹介したいと思います。

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本田宗一郎語録は、1998年に初版が発行されました。裏表紙には、下記のようにあります。

戦後、ゼロから出発した企業を、「世界のホンダ」といわれるまでに育て上げた、創業者・本田宗一郎。

中略

本田宗一郎の遺した言葉は、いまや国際社会の仲間入りを果たした日本のビジネスマンにとって、海外での経営活動や技術開発に関して、またとないヒントを与えてくれるものだ。

本書は6章から成っています。

  1. 友達
  2. 独創と模倣
  3. 会社と組織
  4. 国際化
  5. 現代に生きる
  6. 父を語る 本田博俊

その中でも第2章 独創と模倣 ~独創を追求し続けた技術屋魂の中から

「常識を打ち破って進歩する」と「研究は99%が失敗である」を取り上げてみたいと思います。

目次

NR500 ~独創を追求し続けた技術屋魂

「常識を打ち破って進歩する。」これは、宗一郎さんの言葉を借りれば、「子どものころの<発想と行動>と同じ。アイデアが生まれるのは常識のまま考えたり行動しないだけ」ということだそうです。

そこで思い出されるのは、二輪 ではNR500ではないでしょうか。
1978年、WGPへの参戦復帰宣言の翌年、本田技術研究所に「NR(New Racing)」というレース専任の開発ブロックが発足し、そこで参戦へ向けてのマシン開発が本格的にスタートしました。2ストロークエンジン全盛の時代、また「2ストローク、4ストロークエンジンともに排気量は500cc以下、気筒数は4気筒まで」という、4ストロークには絶対的に不利な車両規定が定められていたWGP最高峰クラスに、あえて”4ストロークのHonda”として復帰することにし、新しい技術への挑戦が始まりました。

4ストロークが2ストロークと互角に戦うには、まず単純にエンジンを2倍回さなければならない。そのためには高回転に耐えうる動弁系を作り、吸気効率を大幅に高める必要がありました。バルブ数を通常の2倍の8バルブとし、それをバランスよく配置できるピストン形状-“長円形ピストン”通称UFOとしました。
「ピストンは真円である必要はない」という常識にとらわれない発想と、「限られた条件で最大限の性能を引き出す」という構想から独創的なV4エンジンが生まれました。その歴史とドラマはここでは書き尽くしきれません。是非、雑誌RACERSでご覧ください。

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これまでも「レースは走る実験室」と言われてきました。常に常識を破る歴史でもあったんですね。人は上手くいったものがあるとついつい真似をしてしまうものです。
宗一郎さんは、その年のチャンピオンを取ったレーシングマシンはとっとと壊して捨ててしまったそうです。翌年に向けて真似しないようにするためだったようです。「創造的破壊」とはこういうことを言うのでしょうね。レースは技術が育ちますが人も育ちます。そしてスピードが求められます。
こうやって「人・技術・スピード」の3つが要求されるレースがホンダのDNAになっていったんだと思います。

NR500(ホンダHPより)
NR500 エンジン(ホンダHPより)
NR500 長円形ピストン(ホンダHPより)
NR500 長円形ピストン(ホンダHPより)

CBX400F ~レースからのフィードバック

また個人的に市販車で印象的だったのは、CBX400Fの登場でした。当時のプレスリリースにこうあります。

本田技研工業(株)は、新設計DOHC・16バルブ・4気筒エンジン(総排気量 399cm3)を搭載し、世界で初めてのブレーキトルクセンサー型アンチダイブ機構 (TRAC)、インボード ベンチレーテッドディスクブレーキなど、数々の新技術を採用した 「ホンダ スーパー スポーツCBX400F」を11月17日より発売する。

中略

そして最後をこう結んでいます。 

なお、これらの新技術は、ホンダが長年レース活動を通じて蓄積してきた先進技術の結集である。

また、カタログの表紙にはこうあります。

400マルチ、いまクライマックス!全身に息づくレーサー・スピリット。数々の革新メカ。いま、400マルチの時代が変わる。

国内では、1979年にカワサキZ400FXが発売されたのを皮切りに、ヤマハがXJ400、スズキがGSX400Fと立て続けに4気筒を発売する中、満を持して登場したのがCBX400Fでした。
当時私は、ホークⅡに乗っていましたので非常に興奮しました。試乗して感動したのは、やはりそのエンジンの吹き上がり方でした。4気筒だということもありますが、明らかに他車とも違う吹け上がり。自分もこんなエンジンを設計してみたい!そのCBXのエンジンを設計された大先輩はその後私の上司にもなり色々教えていただきました。
私が初めて新規エンジンをレイアウトした時の評価会で「なんか全体的に線が細い感じがするけどね。」とコメントを頂き緊張したことを覚えています。当然、描いてある線自体が細いわけではなく、全体的な弱さを感じられたのでしょうか?ベテランの一言だけに突き刺さりました。しかし無事開発が完了、量産を開始し、そのコメントが杞憂に終わったことにホットしたものでした。

CBX400F(ホンダのHPより)

研究は99%が失敗である

「新しい技術や理論を求める仕事というものは99%が失敗である。」

「二輪はホンダの中の先兵である。」とも言われています。よって市販車開発でも数々の新技術が投入されます。新しい技術が入っていないとNHKのチコちゃんじゃありませんが「つまんね~奴だな~!」という事になります。

皆さんご存知のように中国は廉価技術では学ぶべきところが沢山あります。私も中国駐在時代に担当役員からも言われました。「二輪でどんどんやってくれ!うまくいったら四輪も真似るし、うまくいかなかったら四輪はやらないから」と。小さく産んで大きく育てることはホンダの歴史ですね。

とは言っても、その失敗が「猿も木から落ちる」ような慢心や油断が原因では許されません。未知にチャレンジときの失敗だけが容認されるのだと思います。

一人のエンジニアとしては、世の中の過去の失敗を「温故知新」することは非常に勉強になります。そんな歴史を学ぶことができるのが、「失敗百選」です。著者は東京大学教授の中尾政之先生です。「41の原因から未来の失敗を予測する」とあり、内容紹介の欄に「たとえば、旅客機コンコルドの墜落と、歩いている人が空き缶やバナナの皮ですべってころぶことは、同じ原因の失敗です。」とあります。ご興味のある方は是非ご覧ください。続編、続々編まで出版されています。

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終わりに

先日、あるテレビの中でどなたかがおっしゃってました。

歴史上、「過去」は変えられないが「過去の意味」は変えられる、と。

失敗も成功までたどり着くことで、それは「失敗」ではなく「経験」という意味に変わるんでしょうね。

いつまでも、いい「失敗」をし続け、いい「経験」に変えていきたいものです。

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この記事を書いた人

1960年生、山口県宇部市出身。元メーカーの開発エンジニア。 現在は、カーボンニュートラル燃料の普及を研究中。

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