風車といえばオランダかどこかの外国で牧歌的な風景の中に穏やかに佇む姿を想像してしまうのは僕だけだろうか。なんとなく、のどかな感じやのんびりとした感じを勝手にイメージしてしまっていたのが間違いだった。
今回訪れたのは、三重県にある「青山高原」というツーリングスポットだ。風車で有名なスポットで、青山高原公園線という道を走る。そこに現れたのは、のどかな景色とは到底かけ離れた堂々とした風車の姿だったのだ。
三重県にあるのに「関西のツーリングスポット」としてしまっていいのか悩んだが、関西から気軽に行ける、という少々強引な理由ではあるが関西ツーリングスポットとして紹介したい。今回はその青山高原の名物である「風車」をメインにレポートしていきたい。
青山高原
青山高原は、三重県伊賀市東部から三重県津市西部にかけて広がる高原で、標高は700〜800mであるため夏でも快適にツーリングを楽しむことができる。
高原全体に風力発電の風車がなんと91基も設置されており、その規模は日本最大規模を誇る。
青山高原を走る「青山高原公園線(三重県道512号)」は約10kmのワインディングが続く、素晴らしいツーリングロード。
恐怖の名阪国道を走る
関西、特に大阪や神戸方面から行くなら道中で「名阪国道」を走ることになると思う。もちろん違うルートはいくらでもあるだろうが。
名阪国道は、一般国道25号のバイパス道路で、三重県亀山市の亀山インターチェンジ から、伊賀市などを経由し、奈良県天理市の天理ICへ至る高速自動車国道に並行する一般国道自動車専用道路である。
※出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
というわけで今回、僕も名阪国道を走った。上述のように名阪国道は、高速道路ではなく一般国道だ。とはいえ、走っている車はトラックだらけでほぼ全車が時速80km以上で走行している。中には100km以上で走る車もいるから高速道路と変わりない。
ただ、高速道路の方がまだマシだと、僕は思う。
高速道路は、その名の通り高速で走る道路だから、それなりに道路も整備されており高速走行が快適にできるように設計されている。しかしながら名阪国道は一般国道のため、法定速度は60kmの道路だ。
心なしか車線の幅も高速道路に比べると狭い気がするし、なんと言っても路面のコンディションが良いとは言えない。
車で走行するなら、なんの問題もなく走れるだろうが、バイクとなると話は違ってくる。それでも周りの流れに合わせて走ると少なくとも70km、80kmぐらいで走らないと流れに乗れないので逆に危険な感じすらする。
そんな道を距離にして20kmほど走ることになったから、それはもう疲れる。もし初心者ライダーが青山高原に行くなら、名阪国道は避けた方が良いルートかもしれない。
青山高原へ続く快走路を走る
さて、そんな恐怖の名阪国道を抜けると、先ほどの疲れを吹き飛ばすご褒美かのような快走路を走ることができる。
これもまた色んなルートがあるが、今回は名阪国道、治田ICを降り、国道165号へとつながる道を行く。国道165号は初瀬街道と呼ばれる道で、青山高原公園線へとつながる。
この初瀬街道がいわゆる快走路だが、そこに行くまでの道中も快走路と言っていいだろう。
今回いちばん走っていて気持ち良かった道といえば、この初瀬街道になるだろう。青山高原公園線は、快走路ではあるが急なカーブも多く、風車の絶景に見とれてしまうのでバイクで颯爽と駆け抜ける、といった感じではない。
大迫力の風車に圧倒される
快走路を十分に堪能したところで、青山高原公園線へと入る。看板が出ているが見落とさないようにしたい。
この日はたまたまかもしれないが、道に入って最初の方に落ち葉や土などが路面に落ちていた。カーブの途中にそこそこ落ちていたりするので気をつけたほうがいいとは思う。間違っても調子に乗ってオーバースピードでカーブに進入しようものなら、たちまちタイヤがスリップして風車を見る前に・・・なんてことになりかねない。。
山頂に向かい、グイグイと登っていく。標高が上がるにつれ、体感温度も下がり涼しくなったような気になる。実に気持ちがいい。
そのまま心地よくバイクを走らせていると突如として、風車が視界に飛び込んでくる。一つ目の風車か!と思ったのも束の間、幾つもの風車が姿を現し、心の準備もできていないままに風車群と対面することになる。
最初の風車群を抜けてしばらく走ると、前方から大きな風車が近づいてくる。これは至近距離で見れるかもしれないとそのふもとまで行くと、急に視界が開けて山々を見下ろす景色が広がる。その景色だけでも素晴らしいのに、なんとそこには何基もの風車がビュンビュンと羽を回しながら待ち構えてくれていた。
圧巻だ。「すごい」しか言葉が出てこない。
人は本当に感動した時、テレビのリポーターのようにスラスラと流暢に感想を述べることなんてできないと思う。頭が景色の素晴らしさについてこないから、とにかく「すごい」しか出てこないのだ。
この絶景ポイントでは「すごい」を連発し、30分ほどボーッとしてしまった。自然の中にいて雄大な景色を見ているはずなのに、そこに点在する人工物が醸し出す違和感を脳と心が受け入れるのに時間がかかったのかもしれない。それぞれがまるで生き物のように羽を回転させていて、生命とは程遠い無機質なつくりの風車のはずなのに、今にも意思を持って動き出すような気さえしてくる。
至近距離で風車の息づかいを感じる
絶景ポイントをあとにした僕は、またバイクでしばらく走る。時折遠くに風車を見ながら走ることができるのだが、目の前に1基の風車が現れる。直感でわかる。これはデカい。
このクラスの間近で見れる風車が2基続き、しばらく走ると航空自衛隊笠取山分屯基地にたどり着く。青山高原公園線はまだまだ続くが、今回の目的は風車なのでこのあたりで折り返す。
そして先ほど見た間近で見れる風車の下へとバイクを停める。
エンジンを止めて風車を見上げる。一体何メートルの高さがあるのだろうか。空へと伸びる堂々とした風車を見上げているとなんだか足がすくんでくる。
風の音と夏の虫の音しか聞こえない静寂に包まれて風車を眺めていると、少し異音が聞こえてくる。そう、風車が風を切る音だ。当然といえば当然かもしれない。長さ30mはありそうな3枚の羽が勢いよく回っているのだから風切音ぐらいして当然だろう。一見、ゆったり回っているように見えるが、羽の先を追っかけて見てみてほしい。かなりのスピードで回っているのがわかる。
人工物だとわかってはいるが、まるで恐竜の足元にでもいるような感じがして、少し怖い。
またしても「すごい」しか言葉が出てこない。僕の少ない語彙力はまったく活躍する機会がなかった。
バイクツーリングにはおすすめ
存分に風車の迫力に圧倒され、堪能したので青山高原を降りることにするが、その前に「伊勢湾」を眺望できるスポットにも立ち寄った。青山高原の三角点がある場所だ。
動画や写真では風車の迫力はあまり伝わらないと思うので、ぜひ現地までバイクを走らせてほしい。もちろん車で行くことも可能だが、道路脇に気兼ねなく停めれるバイクがやはりおすすめだ。
今回初めて青山高原を訪れたが、ここは本当におすすめできるスポットだ。関西ではないかもしれないが、関西圏から日帰りで行くことができるので一見の価値はある。僕が保証する。
時間を忘れて見入ってしまったせいで、このあと昼ごはんにありつけず彷徨うことになったのは言うまでも無い。