オジサンになると、懐かしい味を自然と求めるようになる。と思っている。良くも悪くも「あの頃は・・・」という気持ちにさせてくれるものが、オジサンには心の癒しになるのかもしれない。
いつものようにGoogleマップでツーリング先を探していた時、ふと目に止まったのがこの「まるや食堂」だ。特に何の変哲もない普通の食堂だが、オジサンの目にはどこか輝いて見え、引き寄せられたのだ。
そして今回は、いつものCBR954RRではなく、CB400SF NC39 VTECに乗って行ってきた。というのもこのバイク、 V TECを体感したくて新たに仕入れたのだ。数回乗って VTECを楽しんだあとは、ヤフオク!に出品しようと思っている。バイクの楽しみ方は人それぞれだが、僕はいろんなバイクを仕入れてヤフオク!で売るという変わった楽しみ方もしている。
南丹を目指して走る
自宅から南丹までは、下道で1時間ちょっとなのでツーリングとしては比較的短い距離である。まずは関西ライダーには有名な国道173号から477号を走る。週末ともなればライダーだらけの道だが、平日なのでバイクは少ない。
今回は仕入れたスーフォアなので、スマホホルダーがついておらずナビが使えないのでちょっとばかり苦労した。いつもナビに頼りっぱなしなので道をあんまり正確に覚えていないのだ。途中で何度か停まり、スマホで道を確認しては走る、という繰り返しで南丹を目指す。
477号に入ると途中からは快走路が続き、この日は天気も良かったので非常に気持ちよくスーフォアでのんびり走ることができた。やはりネイキッドバイクは乗車姿勢が楽だ。普段乗っているCBR954RRは鬼の前傾セパハン激重クラッチなので、だいぶ慣れたとはいえ疲れ方が違う。パワーがあって気持ちはいいのだが、のんびり走るバイクではないので、景色を眺めながらゆったりと走れるスーフォアはとても快適だった。
亀岡の千代川を抜けて国道9号を走っていると、突然「まるや食堂P」の文字が飛び込んできた。目的地はもっと先だと思っていたのに意外と早く到着してしまったのだ。ここでもナビがなかったのでまるや食堂を通りすぎてしまい、Uターンして戻り駐車場にバイクをとめた。
(やはりネイキッドバイクはSSに比べてUターンがめちゃくちゃしやすい)
まるや食堂
もう店構えから昭和感が溢れている。お店の横にタバコの自販機があることも昭和感をより一層強く演出している。そして古いショーケースに飾られたメニューもいい味を醸し出している。
店内は少し薄暗く、テレビの音が響いている。4人がけのテーブルが8卓ほど?あり、腰の曲がったおじいちゃんとおばあちゃんが出迎えてくれ、お目当ての「まるや弁当970円」を注文した。
みなさんお分かりいただけるだろうか。店内で提供されるにも関わらず、蓋のついた箱で提供される弁当を。なぜ、蓋が必要なのか。弁当以外のものを注文すると、お皿で提供されるからもちろん蓋なんてない。それでも弁当を頼むと蓋がついてくるのだ。そう考えると意味のない蓋に思うかもしれないが、この蓋があると無いでは大きく違ってくるのだ。
蓋がついてくることにより、出された時にはまだ中身がどうなっているのかわからない。そこから蓋を開ける瞬間までのドキドキ感とワクワク感がたまらないのだ。蓋で中身が隠され、それをワクワクしながら開けるというストーリーが演出されている。いわばこの弁当箱は遊園地のアトラクションのようなもの。エンターテイメントの一種であると僕は思っている。
弁当の中身なんて皿に持ってしまえばたいしたものは入っていない。ごくごく普通の内容だが、弁当箱を開けるという演出でなんの変哲もない料理が輝いて見え、美味しく感じるのだから蓋はとても重要な役割を担っていると言わざるを得ない。
さて、味の感想はというと、美味しいのは美味しい。抜群にうまいか?と問われると普通に美味しいとしか答えられない。ただ、美味しいさの中に、懐かしさや安心感、ホッとする優しさなんかを感じることができる。これは、この昭和の雰囲気たっぷりのまるや食堂で出された蓋つきの年季の入った弁当箱、そしておじいちゃんおばあちゃんの愛想の良さだからこそ成しえるものである。これが洗練されたオシャレな店で、キレイな弁当箱に、シュッとした若い店員だったら、例え中身は同じでも全く別ものに感じるだろう。いや、むしろ損した気分になるかもしれない。
ほんわかする弁当、ぜひ食べに行ってほしいと思う。
あとがき
前回のツーリングでは、喫茶店のナポリタンを食べに行った。続けて懐かしいものを食べに行ったわけだが、オジサンにはそういう気分の時があるのかもしれない。昭和、とか聞くと古臭いイメージもあるが懐かしく温かいイメージもあるのだ。
今この時点では、懐かしい食べ物と言われてもこれ以上思いつかないが、またどこかで昭和の香りがする食べ物を見つけたら、きっと僕はバイクを走らせることだろう。