個人的ライダーの4大聖地といえば、北海道、ヴィーナスライン、四国カルスト、そして「阿蘇」だ。バイクにリターンしてから約1年半、ようやく、やっとのことで1つ目をクリアすることができた。
さらに言うと、バイクでフェリーに乗るのが初めてだったので、阿蘇+フェリーでテンションは爆上がりだ。そんな九州ツーリングを綴っていきたい。
神戸港からフェリーに乗る
今回はオジサン6人でのツーリングとなった。阪九フェリーで神戸港〜新門司港へ向かう。20時出航、新門司港に翌朝8時半に到着する12時間半の船旅の始まりだ。
阪九フェリーの予約はネットで行うのだが、これについて過去記事で触れているので参考にしていただきたい。
今どきのフェリーはどの会社もそうなのかは分からないが、阪九フェリーでは乗船券と部屋の鍵はネット上で発行されるQRコードで完結するから便利だ。わざわざ窓口まで行く必要がない。
フェリー乗り場のバイクスペースで待機していると係員がQRコードをスキャンして終わり、という簡単な仕組みだ。
ただ、一つだけ注意しないといけないのが、海上では携帯の電波が繋がりにくいので、QRコードはあらかじめダウンロードしておくかスクショしてスマホに保存しておかないと、いざと言うときに部屋に入れない・・・なんてことになりかねない。
出航の1時間前ぐらいから乗船が始まる。係員の誘導に従いバイクを走らせると、巨大なフェリーが目の前に現れて大きな口を開けて待ち構えている。もうこの時点でワクワクが止まらない。
フェリーの中へバイクを進めると、こっちだよーと係員が誘導してくれる。そして壁際のバーにタイヤをくっつけて、ハンドルは真っ直ぐ、ギアはローでと指示されるがままにバイクを停める。もちろん輪止めやベルトなどでバイクを固定はしてくれるのだが、それでも動かないように壁にピッタリとくっつけて、ニュートラルではなくギアはローなのだろう。
そしてシートバックを外して船内へと向かうのだが、途中に自衛隊の大型車両や重機が何台も載っていて、おそらく能登半島の災害支援にでも行っていたのかな?なんて思いながら眺めていた。
もはやホテル
船室は5階〜7階まであり、5階に個室と大部屋と売店やゲームコーナー、キッズコーナーなど。6階は個室とレストランなど。7階に個室と大浴場がある。ロビーにあたる部分は吹き抜けになっており、エレベーターと階段の両方が利用できる。船内はどこも綺麗で広く、海の上にいるとは思えない光景が広がっている。そう、もはやホテルなのだ。
若かりしころに乗ったフェリーとはずいぶんと違う。当時は金もなく雑魚寝の大部屋で寝ていたのを思い出したが、今の大部屋は当時と違う。頭の部分に仕切りがあるのだ。そして上には鍵付きのロッカー、充電用のコンセントまで備わっており、大部屋と言っても最初から場所は指定されているので取り合いにもならないよう工夫されている。
神戸港から新門司港へは瀬戸内海を通る航路なので揺れもほとんどなく、船酔いが心配な人にも安心だろう。たまに少し傾くことはあるが、ほぼホテルと思って過ごせる。ただ、携帯の電波はめちゃくちゃ繋がりにくいので動画などを見て過ごしたい人はあらかじめダウンロードしておくことをお勧めする。
個人的に特に気に入ったのが、大浴場だ。なんと、大浴場から外に出ると露天風呂があるのだ。星空とガラスの向こうに映る小さい光はどこかの街並みだろうか、海の上で夜風に当たりながら露天風呂を満喫できるなんて、贅沢すぎやしないだろうか。
そんな海上ホテルに満足しながら個室のベッドで快適に眠ることができた。
九州へ上陸
ゆっくり眠ることができたので目覚めも良く、朝食をレストランで食べることにした。
レストランがオープンする15分前に行ったのだが、もうすでに行列ができていた。みるみるうちにお客さんが並びだし長蛇の列に。なんでもっと早く開店しないのだろうか?と疑問に思うが、そこはフェリー側の都合もあるんだろう、ということにしておく。
レストランは、自分の好きなものをトレーに乗せて取って行き、最後にお金を払うシステムだ。僕は和食の朝食セットを注文した。まあ、オーソドックスな朝食だが、それなりに満足できたので良い。
そうこうしているうちに8時半になり新門司港へ到着し、下船が始まる。荷物をまとめてバイクに乗る服装に着替え、準備をする。バイクを停めてあるのは3階で、階段で向かう。シートバッグを取り付け準備万端。いよいよ下船だ。
係員の指示に従い、フェリーを降りて九州へ上陸した。いやあ、感動だ。フェリーを降りただけなのに感動してしまった。露天風呂に入り、酒を飲み、ベッドで寝ているだけで九州に来てしまったのだ。こんな楽な旅あるのか?と思ってしまう。
憧れの阿蘇へ
本来なら下道で、未だ走ったことのない九州の道をじっくり楽しみたいところだが今回は時間がない。新門司港で降りたらすぐに新門司ICから高速道路に乗り阿蘇を目指す。
ETCが無いのにETC専用を通る旧車
僕の前を行く旧車の2台がバイクをブンブン吹かしながらETC専用レーンへと進む。と思ったら、後方の1台はゲートが開かずに急に止まるのだ。ETCレーンを通るので速度はゆっくり走ってるとはいえ、まさかこんな所で止まると思っていなかったので危うく追突しそうになり、止まってる旧車の左からすり抜けてゲートの中央部分が空いているのでそのまま通り抜けた。
ゲートを抜けて道の脇にバイクを止めると、僕の後についてきていた残りの5台はゲートで止まっている。どうやらその旧車、ETC車載器自体ついていなかったようだ。ETCも無いのになぜETC専用レーンを通過できると思ったのか?九州に上陸してテンション上がりすぎて、前の仲間についていったらゲート開かなかった・・・というところだろうか。
いや、僕の見立てでは、おそらく後の旧車は初心者だろう。フェリーに乗る時、降りる時、公道を走っている時、なんとなくぎこちなかった気がする。前の旧車に誘われて九州に来たんだろうが、インカム繋がってるなら前の旧車も、「ここETC専用やで!」とか言ってあげればいいのに。
とまあ、なんとか無事に僕の仲間たちもゲートを通り、東九州自動車道を走る。
するとなんと、後方から旧車2台が追い上げて来るではないか。こちらは走行車線を90〜100kmで走行しているから、おそらく旧車の2台は120km程度のスピードだろう。まあ、スピード違反がどうこう言うつもりはないが、後の旧車大丈夫か?と。
バイクの性能的に余裕でぶち抜くことはできるが、火がついて事故られても嫌なので大人しく先に行かせることにした。
湯布院ICを降りる
快晴の高速道路を走って湯布院ICで降りる。と思ったらETCのゲートが開かない。先ほど新門司ICでゲートをすり抜けたのだから、なんとなく心の準備はしていたからバー中央の隙間をすり抜けて路肩にバイクを停め、係員の指示に従いETCカードを渡して高速料金を清算した。
旧車のせいで無駄に時間をロスしてしまい、腹立たしい気持ちもするが切り替えて進むことにした。
湯布院ICを降りると、すぐに「やまなみハイウェイ」を走ることができる。ここから九重連山を通り阿蘇まで一直線だ。ただやはり、三連休ということもあってか渋滞とまではいかないまでも交通量が多く、快走路だが快適に走ることはできなかったが仕方ない。
長者原道標
やまなみハイウェイを走り続けていると、圧倒される景色が現れる。目の前に雄大な山、そこへ伸びる一直線の道。その道の途中に、「長者原道標」がある。そう、SNSなどで有名な写真スポットだ。
我々もここでバイクを停めて写真撮影をゆっくりしたかったが、先約がいた。ハーレー5台ぐらいのグループだ。とりあえずハーレー集団の撮影を待って、道標の前にバイクを停めて写真を撮る。ふと後を振り返ると、違うツーリンググループが順番待ちをしているではないか。
やはり人気のスポットだけのことはある。ほんとは綺麗にバイクを6台並べて撮影したかったが、後で待たれているとそうもいかないので早々に切り上げて長者原をあとにした。
大観峰
次に目指すのは、これまた人気スポットで阿蘇に来た人なら必ず立ち寄るのではないかという大観峰だ。
大観峰は阿蘇北外輪山の最高峰であり標高は935.9m。 阿蘇カルデラやそのカルデラ壁、そして中央火口丘である阿蘇五岳をはじめ、九重連山も一望することができる。駐車場や売店?も整備されていて、オンシーズンの連休に行こうものなら駐車場に並ぶ車とバイクで渋滞している。
もちろん我々も駐車場渋滞に捕まったが、なんとか車1台分のスペースにバイクを6台停めることができた。ここでもうお昼過ぎだったので昼食を・・・と思っていたが人混みで昼飯どころではない。観光バスも次から次へとやってきて外国人観光客もたくさんいた。
景色を眺めて早々に大観峰をあとにし、昼飯を求めてバイクを走らせた。
阿蘇に来たなら赤牛丼
ある程度予想していたとはいえ、それを上回る渋滞によりすっかりランチタイムを逃してしまったが、赤牛丼を食べに行くことにした。
目指すのは阿蘇市内にある「あか牛丼専門店 ごとう屋 本店」だ。大観峰から山を下り阿蘇市内を走るのだが、周りは山に囲まれている。もしかして今走ってるここって、噴火口だったのでは?と思いながら走っていたが、まさかそこまで大きな噴火口はないよね、とも思っていた。実際のところはわからない。
渋滞にも巻き込まれずにスムーズに到着したが、駐車場がない。周りを探すと、阿蘇神社の第一駐車場にバイクは停めれるとのことだ。しかも無料。
さて、ここからが長い。店の前には行列ができている。せっかく来たので並んででも食べたいから、ウェイティングボードに名前と人数を記入して待つことにした。僕らの前には18組の待ちがある・・・いったいどれくらい待てばいいのだろうか。
時間を測ってたわけじゃないので正確にはわからないが、おそらく1時間半ぐらいは待ったのではないだろうか。そしてようやく店内に入って注文を済ませたのはいいが、そこからまた料理が提供されるまで30分ぐらい待たされた。店員も少なく、段取りも悪いように見受けられ、あまりやる気がないのかな?とも思ってモヤモヤしたが、料理は美味い。
僕が注文したのは、高菜ご飯の赤牛丼とダゴ汁のセット。レアに焼かれた赤牛が高菜ご飯の上に贅沢に乗っかっていて食べ応えも味も抜群だ。そして郷土料理であろう、ダゴ汁は初めて食べたが、これもそれなりに美味しい。疲れた体に染み渡る優しい味だ。
かなり長時間待たされたが、待った甲斐があるほどの満足感に満たされたのでヨシとしよう。
別府で泊まる
赤牛丼を堪能したあとは、すでに時刻が16時ごろ。由布院の街を散策したかったが、日が暮れるので宿を予約している別府へ直接向かった。
今回の宿は、おじさん6人でトレーラーハウスをエアBで借りることにした。駐車場も車1台分あるので、バイク6台ならギリギリスペース内に収まる。値段は正確には覚えていないが、たしか6人で25,000円ほどだったと思う。もちろん食事はついていないが、上下左右に部屋がないので気兼ねなく酒盛りができるから気楽だ。
晩飯は宿から徒歩で別府の街に出かけて、行き当たりばったりで探すことにした。
とくに別府の名物でもなんでもないのだろうが、予約なしで居酒屋を探してたら6人空いていたのが、鶏焼肉のお店だった。まあ、普通に美味しく楽しめたのでいいだろう。
存分に食べて飲んでしたはずなのに、まだコンビニで酒とつまみを買い足し、宿に戻っても酒盛りは続く。僕は酒をあまり飲めないが、他のメンバーは底なしに飲むのでついていけない。
3日目
朝目覚めると完全に二日酔いだった。頭も痛いし吐き気もすごい。とりあえず着替えて準備をして絶賛体調不良のまま出発することに。しかも天気が微妙だ。
高千穂峡を目指すものの
まずは高千穂峡を目指してバイクを走らせる。天気が微妙なのが心配だが、高千穂峡はぜひとも行ってみたい場所なのでとにかく走る。
ところが天は味方をしてくれず雲行きがどんどん怪しくなっていく。道中で天気予報を確認しながら走るが、一向に天気が回復する見込みがなく、雨に向かって走っているようなものだったので仕方なく目的地を変更することにした。
3日目は夕方には新門司港に到着しておかないとフェリーに乗れないので、あまり寄り道している時間はない。本来ならケニーロードも行ってみたかったのだが、これも諦めることにした。
目指すは草千里だ。ここなら新門司港への道中に寄れるポイントなので時間的には大丈夫だろう。
草千里
草千里に向かう道がまた素晴らしい。阿蘇パノラマラインだ。素晴らしいのだが、いかんせん天気が悪い。雨もパラパラしているし霧も出ているので見晴らしが全くない。パノラマラインなのに視界は全然パノラマではない。赤牛たちを横目に草千里の駐車場へ向かう。
霧の中、草千里駐車場へ到着するものの、時間が早すぎてレストランは空いておらず。少し休憩しただけで、おそらく雄大な景色が拝めたであろう光景は広がっていなかった。残念すぎるのでいつかリベンジ確定だ。
こんな天気なのに観光客は多く、乗馬体験している人たちもちらほら。外国人観光客も多かったが、せっかく阿蘇に来たのに天気が悪くて気の毒な気持ちになったが、僕らも同じだな。
平尾台カルスト
九州に来たら行ってみたかったスポットのひとつが福岡県にある平尾台カルストだ。日本三大カルストのひとつとして有名だが、果たしてどんな景色を見せてくれるのだろうか。
阿蘇の草千里から大分県の日田を抜けて平尾台カルストへ向かう。道中も天気はあまり良くなかったが雨に振られることはなかったのでラッキーということにしたい。ただ、濡れた路面を走るのは本当に神経がすり減る。
平尾台カルストへ登る山道もウェットな路面を恐る恐る走りながらなんとか到着した。
見渡す限りのカルスト大地は圧巻だったが、観光客は少ししかいない。天気が良ければもっと多いんだろうな、なんて思いながらしばしの時間をカルストを眺めて過ごした。こんな山の上に石灰岩でできた岩がゴロゴロ転がっている光景は日常とはかけ離れていて、まるで異世界に来たような気持ちにさせてくれる。
福岡へ行くなら是非とも訪れて欲しい場所である。
あとがき
平尾台カルストから新門司港までは1時間程度で到着する。帰りのフェリーで飲むための酒とつまみをコンビニで大量に買い出しし、フェリー乗り場へ無事に到着することができた時はなんだかホッとした気分になった。
いよいよ出港の時には、少し寂しい気持ちになったが、またいつか来るぞ!という思いでいっぱいだ。
というわけで、初の九州フェリーツーリングとなったわけだが、結果的には大満足だ。
もちろん天候のせいで行けなかった場所もあるし、不覚にも二日酔いでヘロヘロになったこともあるが、全てが上手くいく旅なんてそうあるもんじゃない。とポジティブに考えたいし、次に行けばいいだけのことだ。
いつもはバイクでただ目の前にある道路を走っているだけのツーリングだが、フェリーに乗るというイベントを挟むだけでこんなにもワクワクした体験ができるのは素晴らしいと思う。もしかしたら関西から九州までバイクで自走で走るというのも楽しいかもしれないが、高速道路をただ突っ走ってるだけと考えると、しんどい・・・しか頭に浮かんでこない。その距離をフェリーで酒を飲みながら寝て起きたら九州に着いているというだけで楽だし、九州に着いてからも体力が残っているので結果的に全体としては楽しめると思う。
必ずリベンジしたい九州フェリーツーリングだが、次は航路を変えて大分か宮崎か鹿児島に到着するフェリーに乗ってみたいと思う。残りの人生であと何回九州に行けるかわからないが、阿蘇はきっと何回でも僕を楽しませてくれるだろう。