これを書いているのは3月下旬、来週より4月がいよいよ始まります。4月は入学式や入社式など色々なイベントがあるのですが、ライダーにとっては待ちに待った季節がやってきます。はい、革ジャンを着て気持ちよくバイクに乗れるシーズンが到来します(但し、九州の場合です)。レザー大好きな筆者が思うに、革ジャンにTシャツを着てストレスなくバイクに乗れる時期は、決して長くありません。おそらく4月と10月くらいではないでしょうか。バイク&革ジャン好きのベストシーズンがいよいよやってくるわけです。
そしてカフェレーサーに乗るなら、どんな革ジャンを選べば良いのでしょうか?革ジャンにも色々種類があるのですが、バイクにはライダースを着て乗りたいですよね。
昨年、筆者は革好きが高じて、レザーソムリエ (basic)の資格を取得しました。そんな私が、カフェレーサーなどのクラシックなバイクに乗るなら、是非着てほしいレザーブランドがあります。それはロンドンが誇る老舗ブランド「ルイスレザーズ」です。ということで今回は、「カフェレーサーに乗るならルイスレーザーズを着よう」と称して、憧れのルイスを徹底解剖していきたいと思います。
ライダースとは?
ライダースとはオートバイに乗る時に着用するライダースジャケットのこと。主に革製のショート丈、ジップアップ式ジャケットを指します。ライダースが世に登場したのは1920年代、ルーツは軍人が着ていたフライトジャケットと言われています。
シングルとダブル
ライダースの形には主に、「シングル」と「ダブル」の2種類があります。写真左のように前合わせが一重になっているのがシングル、右のように二重になっているのがダブルです。
シングルライダースの特徴はシンプルで合わせやすく、カジュアルにも着れるところです。対してダブルライダースは前合わせが二重になっている為、バイクに乗る際の風防や防寒性はシングルに比べて優れています。しかしながら見た目が少しハードに見えるので、タウンウースでは少し着にくいかもしれません。
アメジャンとロンジャン
バイクのルーツやタイプによってライダースを分類することもあります。1つ目は「アメジャン」、つまりアメリカのライダースのことです。アメリカではチョッパーに代表されるアップハンドルのバイクに乗るのが主流でした。両腕を前に伸ばして乗るため、アメジャンにはアクションプリーツが入っているモノが多く、エポレット、Dポケ、ベルトなどがついています。
2つ目は「ロンジャン」、言うまでもなくロンドン発祥のライダースです。ロンジャンはイギリス起源のカフェレーサーに乗るためのライダースとして作られました。カフェレーサーは前傾姿勢になるので、アクションプリーツをつける必要がありません。また腕を下方向に向けてバイクを操るため、袖丈がアメジャンより長めに作られています。そしてタンクを傷つけないように、バックルは小さめに両サイドに設置されています。
それでは次章より、ロンジャンの代表格である「ルイスレザーズ」について書いていきます。
ルイスレザーズとは
カフェレーサー好きやヨーロッパ音楽好きなら、誰もが知っている「ルイスレーザーズ」。まずはルイスレーザーズのルーツについてお話しします。
航空業界のレザーウエアを作る
イギリスを代表する最古のレザーウエアブランド「ルイスレザーズ」。1892年に創業者D・ルイスが「Dルイス・リミテッド」の名前で起業しました。ロンドンのグレート・ポートランド・ストリートに1号店をオープンし、当時はレザーウエアではなく洋服仕立て及び防護服を作っていました。転機となったのは1926年。新たな産業として当時注目を集めていた航空業界で、パイロットが極寒の中操縦するためにレザーウエアが必要とされていました。そこでDルイスは本格的にレザーアイテムの制作に取りかかり、航空業界に参入。1929年に会社が法人化することになります。
AVIAKITの意味
ルイスレザーズのロゴトレードマーク「AVIAKIT」は、航空の意味を指す「AVIATION」と、装備の「KIT」を足して生まれた言葉だと言われています。デザインこそ年代によって変わっていきますが、航空業界のレザーウエアが、ルイスレザーの原点であることがよく分かります。
オートバイ産業の発展
1930年代は、イギリスのオートバイ産業が著しく発展し、それに伴いライダー達が耐久性と高い機能性を持つ、レザーに注目し始めます。そして1940年代に、ルイスレザーズはオーダーメイドでのレザージャケット制作を始めることになります。1950年代に入ると、レーシングライダー達がルイスレザーズを着用し、ルイスは爆発的な人気ブランドとなっていきます。この頃になると一般ライダー達が、カジュアルブランドとしてルイスレザーズを着用するようになりました。
俳優やミュージシャンに愛されたルイスレザーズ
ルイスレザーズを世界のスターダムに押し上げたのは「BRONX(ブロンクス)」というモデル。BRONXはエポレット&ベルト付きダブルライダースで、ルイスの中ではアメジャンぽいデザインです。と言うのも、1953年に公開された映画「乱暴者(あばれもの)」で主演のマーロンブランドが着ていたアメジャンをモチーフにして作られたのが、このBRONXだったからです。この映画をみた若者達が、マーロンブランドにそしてルイスに憧れ、BRONXが大ヒットしたのは有名な話です。そしてこのBRONXをきっかけにして、アメジャン全盛だったレザーライダース界隈に、ロンジャンがムーブメントを起こしたと言われています。
また音楽業界で有名なのは、パンク界のカリスマ的バンド”セックスピストルズ” のベーシスト、シド・ビシャスが着ていた「DOMINATOR(ドミネーター)」。DOMINATORはシングルライダースですが、鋲でカスタムされたモノがシドジャンと呼ばれるようになり、大ヒットしました。このように著名なムービースターやミュージシャンがルイスを愛したことにより、ルイスレザーズは有名になりました。
ここまでルイスレザーズのルーツや歴史に触れてきました、次章よりいよいよルイスの革ジャンに迫っていきます。
ルイスの革の種類
第1章で紹介したアメジャンの革は、主にカウハイドやブルハイド(牛)を使っています。対してルイスなどのロンジャンによく使われている革がシープスキン(羊)です。理由はアメリカに比べて羊毛を多く使うため、羊の飼育量が多かったことにあります。また1930年代中期までの移動
手段が馬車だったのですが、その後自動車産業が飛躍的に発達し、馬が使われなくなったことから、1940年代に馬革の革ジャンが増えたと言われています。
選べる革の種類
現在発売されているルイスレザーズの革は、シープスキン、ホースハイドそしてカウハイドから選択することができます。シープやホースはクロム鞣しという手法を用いているのですが、カウハイドのみクロム鞣しとベジタブルタンニン鞣し(通称ベジカウ)の2種類があります。
ルイスはカラーが豊富
そしてルイスレザーズが選ばれる理由の1つに、カラー展開が豊富なことが挙げれられます。ホースハイドでは10色、シープスキンは4色、カウハイドは黒のみです。参考にホースハイドのカラー展開図を下記に貼っておきます。
ルイスレザーズの人気モデルを紹介
ルイスのライダースは本当に沢山のモデルがあるのですが、ここでは紹介しきれないので、人気のあるシングルライダーズ1つ、ダブルを2つ紹介していきます。
シングルライダース
・ドミネーター:まずはルイスレザーズを代表するシングルライダースが「ドミネーター」です。先ほど紹介したシドジャンのベースがドミネーターになります。ドミネターはシンプルな襟付シングルで、胸元にジッパーポケットがあります。またハンドウォーマーポケットも左右についており、ルイス入門編としてはどんな格好にも合うので、オススメの1着です。
ダブルライダース
・サイクロン:数あるルイスレザーズのライダースジャケットの中で、今一番人気なのがダブルライダースの「サイクロン」。何と言ってもライダーを意識して作ったモデルだけあって、タイトに見えながらもバイクに乗りやすい仕立てと、エレガントさが同居している素晴らしいライダースです。ワンポイントにもなっているウエスト・ベルトもユニークですね。
・ライトニング:そしてサイクロンと共に人気を二分するのが「ライトニング」です。現在、ライトニングは2種類のモデルが存在します。391ライトニングは、左右アジャスターベルトが前方についています。対して402ライトニングはアジャスターベルトが後方についており、前方からは見えません。それ以外のデザインの違いがないのですが、サイクロン同様に非常に綺麗に仕立てられたダブルライダースです。
こうやって見ていくと、アメジャンのルーツはワークウエアなのに対して、ルイスなどのロンジャンはテーラード(仕立て)からきているので、シルエットがスーツのように綺麗なのが特徴です。またルイスは、コムデギャルソン、ヒステリックグラマー、ポールスミスなど著名なファッションブランドともコラボしています。
ルイスレザーズをオーダー
カフェレーサーに乗り始めてもうすぐ3年が経過する筆者ですが、ルイスレザーズはずっと欲しいと思っていました。しかしながら中々タイミングがなかったのですが、昨年8月ついにルイスレザーズをオーダーすることになりました。理由は、愛車BMW・R100RTカフェカスタムに乗るなら、服装もとことん拘りたいと思ったからです。残念ながら筆者が住む九州・熊本にはルイスを販売しているお店がないので、お隣の福岡に見にいきました。
結論から言うと、そこで運命的なルイスレザーズに出会うことになります。福岡のルイス販売店の店長さんの私物であるサイクロンが、愛車のタンクの色と酷似していたのです。始めは偵察のつもりできたのですが、そのルイスを見て一目惚れしました。そして試着させてもらえたのですが、自分とサイズもピッタリ。(筆者は身長177cm体重74キロでサイズ40のタイトフィット着用)これは運命だと感じてしまったわけです。
これと同じものを購入したいですと、つい口から出てしましました。その色は、ビンテージターコイズ(通称ビンタコ)と言って黒や茶色に比べて珍しいカラー。当然吊るしの在庫もなく、オーダーするしかありません。ほぼ店長さんと同じ仕様で、注文することにしました。気になる納期ですが、ルイスは大人気のため1年~1年2ヶ月待ち。順調にいけば、今年の秋にルイスを着れるかと思うと楽しみでなりません。因みに気になるお値段は、値上げ前だったので約20万円でした。
まとめ:ルイスは最高のライダースです
今回は、「カフェレーサーに乗るならルイスレーザーズを着よう」と題して、大好きなルイスを徹底解剖してみました。確かにルイスレザーズを注文すると、値段は高いし納期は1年以上かかります。ですが、ルイスレザーズのライダーズは、バイク系メーカーが作る革ジャンとはモノが違います。歩んできた歴史の重み、革質、洗練されたデザイン、バイク界隈だけでなく音楽やファッション業界からも支持されるのには理由があります。それに自分好みのカスタムができるのもルイスの良いところです。ルイスのライダースは20万円以上しますが、10年着れると思えば年間2万円、20年着れば年間1万円です。ルイスを着るために、体型維持するのも良いことだと思います。そしてルイスはリセールも良いので、資産として持っておいても損はないです。
こだわりのカフェレーサーやクラシックバイクに乗る方は、ぜひ1着ルイスレザーズを!!
今年の秋には、念願のビンテージターコイズのサイクロンを纏って、カフェに乗る自分を想像しながら、この投稿を終わらせて頂きます。