走りのマナーを考えようぜ~安全のため、嫌われないために

バイク乗りがバイク乗りから「走りのマナーを考えようよ」なんていわれたら、あまりいい気持ちはしないと思う。なぜならそれは説教じみているし、バイクが持つ自由さが損なわれるような気がするからだ。

それでも私が走りのマナーを提案したいのは、自分たちの安全のためと、バイクに乗らない人から嫌われたくないからだ。

最近、バイクの死亡事故のニュースをよく聞くし、バイクに乗らない人から嫌われるとバイクで走りにくくなる。

だからマナーを守って安全性を高めて、一般の人から好かれるバイク乗りになることはメリットが大きいと思うのである。

私は本稿で、私が考える走行マナーを提案するが、もちろん「これが絶対に正しい」などとは思っていない。この記事の目的は、走行マナーを考えるきっかけをつくることだけである。

目次

コンビニの駐車場を使ったらなんか買おうぜ

最初の提案は、コンビニの駐車場にバイクを停めたらなんか買おうぜ、だ。

バイク乗りにとってコンビニは、走りのインフラだ。ツーリングの集合場所にも休憩場所にもなるし、トイレを借りることもできる。

たむろさせてもらう対価としての買い物

トイレを借りるときは店のなかに入るので、何かを買わずに出ると気まずいから、ちゃんと何かを買うことが多いと思う。

しかし駐車場でたむろしたときに、わざわざ店のなかに入って何か買うバイク乗りは少ない印象がある。

でも駐車場はコンビニの重要資産だ。それを使わせてもらうのだから対価は支払ったほうがよいと思うのだ。

レッカー車を待つときは一言ことわろうぜ

それと、バイクが故障して動かなくなったとき、コンビの駐車場でレッカー車と待ち合わせることがあると思う。そのときは店の人に事情を話したうえで何か買ったほうがよいと思う。

バイクが故障して困っているバイク乗りに「何も買わないなら駐車場から出ていけ」と言うコンビニ店主はいないと思う。だからこそ、そう言われる前に感謝の気持ちを行動で示したほうがよいと思う。

空吹かしはダサいって思おうぜ

私がバイクの空吹かしを嫌うのは、騒音をまき散らすだけでなく、周囲の人を威圧するからだ。しかも空吹かしするメリットは、自己顕示欲を満たすこと以外に何もない。空吹かしをしてバイクの調子が上がることはない。

私は駐車場に入ったらすぐにエンジンを切るし、駐車場を出る直前までエンジンをかけない。

唯一許される空吹かしは、バイクに興味を持った子供にアクセルを回させてあげることではないか。道の駅にバイクを停めていると、子供がこちらを凝視していることがある。そうういときに「エンジン吹かしてみる?」と声をかけてあげるのは、なんか良いことのような気がする。

4台はもう迷惑になると思っておこうぜ

私は複数台でツーリングするとき「4台はもう走っているだけで迷惑になる」と思っている。2台または3台なら集団走行の感じがしないのだが、4台がダンゴになって走っていると「集まっているなあ」と感じる。

バイクに乗らない人にとって、バイク集団というものは、仮に制限速度内で走っていたとしても威圧感がある。人によっては恐いと感じると思う。

映画「マッドマックス」でも漫画「湘南爆走族」でも、バイク集団は暴力集団や迷惑集団として描かれている。また、多くのバイク乗りには無縁の存在だが、それでもなお、世間は暴走族もバイク乗りに数える。

だから世間がバイク集団に悪い先入観を持つことはやむをえないのだ。

さらに一般の人はバイクの種類をみわけられないから、族車もチョッパーもSSもツアラーも区別がつかない。つまり一般人には、悪のバイク集団も善のバイク集団もない。

バイクが4台集まったら、とにかく丁寧かつ慎重に走ろうぜ。

交互走行しようぜ

複数台のツーリングでは交互走行を提案したい。

上記のイラストのAパターンは、交互走行していない例である。後続のバイクが先行するバイクの真うしろについている。これでは、先頭の自動車が急ブレーキをかけたら、先行するバイクが自動車に突っ込み、後続のバイクは先行するバイクに突っ込んでしまうかもしれない。

しかし交互走行をしているBパターンなら、後続のバイクは先行するバイクに衝突するリスクが減るし、自動車までの距離が長いから制動距離を稼ぐことができる。

自分の身を守るために、先行バイクの真うしろは走らないようにしよう。そして、自分のうしろを走るバイクが自分の真うしろにきたら、交互走行を提案してみて欲しい。

追い抜かさないようにしようぜ

複数台ツーリングでは、走行中に原則、追い抜かさないようにしたい。

先行するバイクのうしろを走っていると、先行するバイクの動きを「読める」と思えることがある。だから、うしろを走る自分が先行するバイクを抜かしても接触しない、と思えてくるのだ。

それで颯爽とバイクを追い抜くバイク乗りがいるが、ここはサーキットじゃない、といいたい。

先行していると、後続バイクに抜かされたときにびっくりすることがある。私は、追い抜き癖がある人とは、恐くて一緒に走りたくない。

そこで「このツーリング・チームでは走行中はよほどのことがなければ追い抜かさない」というルールをつくっておけば、前を走っていても、うしろを走っていても安心だ。

信号停車の仲間を待たないでおこうぜ

これも複数台ツーリングに関するアドバイスである。

複数台で走っていると、先行バイクが信号を抜け、後続バイクが信号で停止することがある。このとき先行するバイクが信号から少し進んだところで停車していることがあるが、あまり安全とはいえないような気がする。

道路上の停車バイクはやっぱり邪魔だぜ

バイクは細身だから、極力道路の左側に寄って停まっていればバイクの右を走る車の走行を邪魔しないと思えるかもしれないが、車からすれば障害物であることには違いない。しかも5台も10台も縦に並んでいると相当迷惑だろう。

黄色通過癖はつけないほうがよい。落ち合い場所を決めておこうぜ

さらに、信号停車の仲間を待つのが習慣になってしまうと、後続バイクは仲間を待たせたくないから「赤になりかけの黄色」や、ときに「赤になったばかりの赤」でも信号を突破したくなる。これは純粋に危険だし切符を切られてしまうかもしれない。

信号停車の仲間を待たないようにするには、次の休憩場所を決めておくことだ。こうしておけば、先行バイクは、後続の信号停車バイクを待たずに次の落ち合いを目指せばよい。これなら先頭バイクと最後尾バイクがどれだけ離れていても再開できる。

多人数のランチは店に予約しようぜ

バイク仲間とのランチはツーリングのメインイベントの一つであるが、1)多人数で、2)有名観光地の、3)小さな有名飲食店に、4)正午前後に入っていくと、店の人やほかの一般客の迷惑になりかねない。この4条件をそろえないようにすることがマナーといえると思う。

4条件のうち一つでも外れるとマナー違反になりにくくなる。例えば、座席数が多い広い飲食店なら、正午ごろでも大人数を歓迎してくれる。小さな有名飲食店でも、14時とか15時とかなら店が空いているかもしれない。

どうしても多人数で有名観光地の小さな有名飲食店に正午前後に入りたいときは、予約をすればよいかもしれない。

ドタキャンOKをルール化しようぜ

仲間とツーリングに行く日の朝に、急に行けなくなることがある。その場合ドタキャンをすることになるのだが、ここでもマナーを提案したい。

私はバイク仲間に「ドタキャンOKにしませんか」と提案している。

登山とは違う。俺たちはロンリー・ウルフさ

バイクは気分で乗るところがあるから、誰でも朝目覚めて「なんかバイクに乗る気になれない」と感じることがあると思う。それでもツーリングの約束をしていると無理でも行かなければならなくなる。

それを避けるためのドタキャンOKである。バイクに乗りたくないときに無理に乗ると危険なような気がするので、ドタキャンしたい人は行かないほうがよいと思うのだ。

体調不良も同じ。高熱が出たり下痢が止まらなかったりしたら当然にドタキャンするわけだが、しかし私は「なんかダルい」くらいでもドタキャンしたほうがよいと思っている。楽しめないからだ。

バイク仲間のなかでドタキャンOKをルール化しておくことは意味がある。

このルールがあると気軽にドタキャンできるし、ドタキャンされてもあまり不愉快じゃない。

ところがドタキャンOKのルールがないと、ドタキャンしにくくなるし、ドタキャンされるとなんかイラっとくる。

複数人で登山をする場合、荷物の分担があるのでドタキャンは大迷惑になる。しかし複数台ツーリングは団体競技ではなく、個人競技者の集まりだ。だから「ドタキャンOK」ルールは合理的なような気がする。バイク乗りはロンリー・ウルフさ、的なノリで。

ドタキャンを詫びに、とりあえず集合場所には行った話

個人的な話を。

そのとき私は、前の日から仲間とのツーリングを楽しみにしていた。「明日は早起きして、バイクを磨いてから集合場所に行こう」と思ったりして。

そして翌朝、ヘルメットとグローブと洗車セットを持って家を出て、バイクを磨いた。するとあることに気がついた。「あれって今日だったのでは」と。

携帯のメモ帳をみるとやっぱり、この日に別の友人と昼から飲みに行く約束をしていた。その約束は2カ月前にしたものだったので、すっかり忘れていた。

これはもうツーリングをドタキャンするしかなかった。

ただ私は、予定とおりバイクに乗ってツーリングの集合場所に行った。昼飲みは正午からだったので、午前中はまだ自由に動けたのである。

そして集合場所に集まってきたバイク仲間に、ドタキャンしなければならなくなったことを詫びた。するとバイク仲間は「ドタキャンの知らせはメールでもよかったのに」と言ってくれて、さらに「正午前までに家に帰ればいいのなら少し走ろうよ」と言ってくれた。

これは嬉しかった。

それで一緒に海岸線を1時間くらい走ってから、私だけ帰路につき、仲間はツーリングを継続した。

ドタキャンOKのルールがあってもドタキャンは極力避けたほうがよいし、ドタキャンするときは誠意をみせたほうがよいだろう。

仲間の家族の電話番号は控えておこうぜ

ツーリングに行くバイク仲間の家族の携帯番号を知っているだろうか。仲間が事故を起こして重傷以上になったら、救急車を手配して警察を呼び、家族に連絡しなければならないからだ。

そのとき事故った人が意識を失っていたら家族の電話番号を聞き出せない。

まとめ~マナーマナーってうるさいかな

「バイクぐらい自由に乗せろ」「マナーマナーってうるせえんだよ」

そう言われるだろうと思いながら、この記事を書いた。

バイク乗りのなかにはワルがいるし、ワルとマナーは相容れないものだ。だから一部のバイク乗りにマナーを提案するのは無謀なのかもしれない。

それでも走行マナーを考えたかったのは、バイクで走れる場所と機会を減らしたくなかったからである。

かつて高校生にバイクを与えない運動があった。峠道と港湾道路からバイク乗りが排除されたこともあった。バイク乗りは15年くらい前まで世間の冷たい視線にさらされてきた。

15年前に何が起きたのかというと、バイク乗りが激減したのである。それでバイク乗りは、絶滅危惧種のように、少し大切に扱われるようになったのである。今、世間の目は案外温かいと思う。

しかし数年前にバイクブームが再燃して、事故るバイク乗りや爆音バイクが増えてしまった。私は、また世間に嫌われるのではないかと危惧するのである。

世間に嫌われないようにするにはマナーを守るのがよいと思うのだが、いかがだろうか。

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この記事を書いた人

●著者紹介:アサオカミツヒサ。バイクを駆って取材をするフリーライター、つまりライダーライター。office Howardsend代表。1970年、神奈川で生まれて今はツーリング天国の北海道にいる。
●イラストレーター紹介:POROporoporoさん。アサオカの親友。

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