MotoGP第3戦、アメリカズGPはもう記事にしないでおこうかと思っていたが、これまたドラマが散りばめられていたので僕の執筆欲がキーボードを叩かせている。
今回の舞台はアメリカのテキサス州、サーキット・オブ・ジ・アメリカズで開催される。通称COTA(Circuit of the Americas)と呼ばれており、アメリカと言えば小椋藍が所属するトラックハウスの本拠地でもある。
このCOTAといえば、なんといってもマルケス兄だが、この話については後述したい。
さて、予選から天候が不安定な中はじまったMotoGP第3戦アメリカズGP、いったいどんなドラマを観せてくれたのか、連日深夜にアラームをセットし、目を擦りながらタブレットにかじりついて観戦した僕の独断と偏見にまみれた感想を述べていきたい。
COTA王マルク・マルケス

まずこの話をしなければ、アメリカズGPは語れない。もちろんご存知の方も多いとは思うが、復習がてら読んでほしい。
このアメリカズGPが開催されるサーキット、通称COTAはマルケス兄がHONDA時代に圧倒的な強さを見せているコースである。
まず、2013年に史上最年少ポールポジションからの史上最年少優勝を果たしたのがCOTAだ。
そしてなんと、そのまま6年連続ポールトゥウィンを成し遂げている。とんでもない偉業である。
その後は2021年に7勝目を達成した。2022年には3列目9番グリッドからレースを迎えたが、スタートのミスで最後尾に後退、そこから驚異的な追い上げで18人抜きを達成している。
昨年2024年は、グレシーニレーシングに移籍して初めてのドカティでCOTAを走ったが、あえなく転倒し、優勝は史上初3メーカー(スズキ・ヤマハ・アプリリア)での優勝を達成した、マーベリック・ビニャーレス(アプリリア)だった。
そして、今年2025年シーズンはファクトリードカに乗るマルケス兄が開幕から3連続ポールポジションとし、このCOTAでは8回目のポールポジションを獲得して8度目の優勝を狙うのである。これには興奮しないわけがない。
面白い展開を期待させてくれそうなスターティンググリッド


上の画像は、COTAでのスターティンググリッドだ。COTA王のマルケス兄は当然の如くポールを獲得したが、マルケス弟は3番手で、マルケス兄弟の間を割って入ったのが、VR46のファビオ・ディジャアントニオ(発音が難しくてカタカナでどう書けばいいのか分からない)なのだが、ここ最近VR46が頑張っている。
前回のアルゼンチンでもモルビデリが見事表彰台の3位を獲得していたし、ファビオも5位という結果だったからオーナーであるロッシさんも大喜びだろう。
天才児アコスタは4番グリッドだが、今年のルーキー、我らが日本の小椋藍は18番グリッドからのスタートとなっている。
注目したいのは、日本勢のマシンが3列目を埋めたことだ。7番と8番にHONDAのマリーニとミアが、「ザルコにばかりいいカッコはさせられない!」とでも言わんばかりにファクトリーの意地を見せてきた。そして9番グリッドにはプラマックYAMAHAの、ジャック・ミラーが。このジャック・ミラーだが、坊主頭でパッと見はいかついのだが、家族といる写真をよく見かけるし笑顔も好感が持てるのでいい奴っぽくて個人的には好きな選手だ。
そしてちょっと注意しておきたいのが、12番グリッドのアルデゲル(グレシーニドカティ)だ。今シーズン、Moto2からステップアップしてきたルーキー3人のうちのひとりで、小椋選手を抜いて12番を獲得したのだ。開幕の2戦ともあまり注目されるようなポジションにはいなかったのだが、そろそろGPクラスのモンスターマシンにも慣れてきたのだろうか。
そんな感じで決まったスターティンググリッドだが、本番のレースではどんな展開を見せてくれるのだろうか。前年覇者のビニャーレスは10番からのスタートでどこまで追い上げるのか、やはりマルケス兄が圧倒的な強さを見せるのか。いろんな展開を予想してワクワクしながら、まずはスプリントレースを観戦した。
やっぱりね、というスプリント

快晴の元、COTAでのスプリントレースが始まった。日本時間で朝の5時。。。眠い目を必死にこすりながらタブレットにかじりつく。僕のタブレットはBluetoothでスピーカーに接続されているのだが、音量を大きくすると流石に朝の5時は隣の人に迷惑だ。(マンションに住んでいるので)かといって静かに観戦するのは迫力が感じられないのでヘッドフォンを付けて爆音で観戦することにした。
ポールポジションから好スタートを切ったマルケス兄が第一コーナーに先頭で突っ込んでいったと思ったら、どこからともなく現れたペッコミサイルが1位に躍り出る。どうやら今回のペッコは本気らしい。ファクトリードカティのエースは俺だ!と言わんばかりの気迫のある走りで先頭を走っていると思ったら、あえなくマルケス兄に先頭を奪われてしまう。その後もマルケス兄のあわやハイサイドというミスで再びペッコが先頭を奪ったが、すぐさまマルケス兄に抜き返され、さらにマルケス弟にも抜かれて3番手に後退した。
後方ではクアルタラロが4番手を走って健闘しているし、HONDAのミアもシングルポジションをキープして走っている。4位以下では抜きつ抜かれつの激しいバトルが繰り広げられているので、映像も4位以下を映す割合が増える。先頭の3台は相変わらず安定して距離を保ちながら突っ走っているからだ。

結局終わってみれば、表彰台を飾った上位3台はいつも通りの結果に。日本勢はYAMAHのクアルタラロが6位、HONDAのマリーニが8位と今回も10位以内に日本車が入ってきたのは嬉しい限りだ。終盤まで頑張っていたミアは結局クラッシュしてリタイヤという悔しい結果だが、またですかい?という感じ。
そしてしれ〜っと9位に入っていたのが、我らが小椋藍選手。18番グリッドからのスタートで着々とポジションを上げ、上位陣のクラッシュもあったおかげか、終わってみれば9位という結果でポイントを獲得しているからすごい。やはり転倒なしで最後まで走り切るということがいかに大切かがわかる。
ミアが転倒したのは残念だが、ミアにしてみればもちろん転倒したくてしたわけじゃなく、HONDAのマシンが遅いからという理由もあるのではないだろうか。ドカティや他メーカーのマシンに比べて直線の加速が遅いから、そこで開いた差を穴埋めするためにブレーキングで突っ込んだり限界ギリギリの走りをしないとついていけない状況なのかもしれない。
実現はしないだろうが、全員が同じメーカーの同じ型のバイクに乗った場合、いったい本当に早いのは誰なんだろうか。やはりそれでもマルケス兄が早いのは間違いなさそうだが、あまり上位で活躍していない選手でも条件が同じならどうなるのか見てみたい気持ちはある。
波乱の幕開け、レインかスリックか・・・
決勝レース当日はあいにくの空模様、雨がパラパラ降っており、路面は濡れている。サイティングラップが終わって、各車グリッドに並ぶ。雨はどうやらあがったようだが、まだ路面はウェットな状態。ほとんどのライダーがレインタイヤをチョイスしている。
こういう天気の場合、主催側が路面はウェットだよ!と判断すれば、レインタイヤを履いていたとしても、ピットにはスリックを履かせた換えのバイクを用意することが許されるようだ(逆もしかり)。もちろん、レース途中での乗り換えも可能。
ここで注目しておくべきは、フロントの方を陣取っているライダーはほとんどがレインタイヤを履いていて、スリックを履いているのは小椋藍と数名のみ。
刻々とスタートの時間が迫ってきて、さあそろそろウォームアップラップに入ろうかという時、突然マルケス兄がバイクをほったらかし、ピットに向かって走り出したのだ。ところどころ路面が乾いてきているのを確認していたのだろう、スリックに乗り換えるつもりで走っている。ところがだ、それを見たペッコや他のライダーたちも、パニックになったのか続け!とばかりにピットに向かって走り出し、一瞬にしてグリッド上とピットはカオス状態に。
バイクを乗り換えたマルケス兄たちは、ピットレーンの先まで行って止まっている。
詳しいルールはよくわからないが、通常はウォームアップラップが終わると各車グリッドに並び直し、一斉にスタートするのだが、突然バイクを換えた場合、ウォームアップラップが終わってもまたピット上からスタートする決まりのようだ。そうするとだ、スリックを履いた選手たち、そう小椋藍たちはグリッド上からスタートするので当然のように先頭を陣取ってレースを進めることになる。(ピット上からだとコースに入るまで速度制限があるため出遅れることになる)そうなれば、もしかしたら小椋藍が表彰台に乗る、なんてことが実現するかもしれないのだ。
しかしながらそんな期待は一瞬にして終わる。なんと赤旗が振られてレースは中断、全員再スタートとなってしまう。そして混乱のせいで時間が遅れたので、本来なら20周のところ19周に短縮され、レースが再開されたのだ。

結果から言うと、序盤こそペッコが先頭を走るシーンも見られたものの、終始マルケス兄がレースをリードすることになる。ところがまた、アクシデントが起きた。
レースも終盤に差し掛かり、残り数周でマルケス兄の3連勝は確実だと思われたその時、ゼブラゾーンにわずかながら乗ってしまうミスをしたマルケス兄はそこでスリップして転倒。なんとかバイクを起こして再スタートしたものの、転倒の衝撃で右側のステップとブレーキペダルが飛んでいってしまい、それでも懸命に走ったものの、最後は諦めてリタイヤ。
マルケス兄の転倒により先頭に立ったペッコがそのままチェッカーを受け、今季初の優勝を手にすることとなった。
以下、決勝レースのリザルト。


カオスだったが、これもレース
マルケス兄の暴走によるレース中断からの再スタート。これはルール的にはどうなんだろうか、主催の判断は正しかったのだろうか。最初からスリックを履いていた小椋藍や他の選手たちは納得できているのだろうか。
波乱を含むレースとなったが、雨の影響もあるのか5人のライダーが転倒によりリタイヤしている。
終わってみれば、え?いつの間に?という感じで小椋藍はすんなり9位でチェッカーを受けている。前を走っていたライダーたちが軒並み転倒してくれたおかげかもしれないが、転けないのも実力だ。
ちょっと期待していたルーキーのアルデゲルも転倒、いい感じでトップ10内を走っていたHONDAのミルも転倒、天才児アコスタも転倒だ。

日本勢はというと、トップ10内にYAMAHAが2台、HONDAが1台、昨シーズンからは考えられない健闘といえよう。特に今回はジャック・ミラーが5位に入り大健闘だ。元々、ウェットに強いと言われてたジャック・ミラーがそのまま意地を見せた感じだ。
さてさて、今回のマルケス兄がリタイヤしてノーポイントとなったことで、なんとマルケス弟がポイントで1位に躍り出た。2位はマルケス弟、3位に今回優秀を手にしたペッコと並ぶことに。次週からカタールを皮切りにヨーロッパ戦が始まる。ペッコがそろそろ本領を発揮するか、マルケス弟が念願の初優勝を手にすることになるのか、やっぱりマルケス兄が強さを見せつけるのか、日本車勢の表彰台はあるのか、それとも小椋藍が?
見どころ満載で今年のMotoGPもまだまだ僕を楽しませてくれそうだ。
あ、マルケス兄さん、COTAの8度目の勝利逃して残念でしたね。来シーズンに期待してますよ。