ライダーの皆様、こんにちは。
ようやく長かった梅雨も明け、暑い夏が始まりましたね。バイク乗りには少々辛いシーズンですが、私は早朝に少しツーリングして、夏のバイクライフを楽しんでいま す。
先日「サーキット走行会」について投稿させて頂きましたが、サーキットを走るようになってからは、バイクの運転技術をもっと向上させたいと思うようになりました。
バイクを上手く扱えるかは、まずはバイクの仕組みや構造を知ることです。中でもタイヤとブレーキはバイクの中で最も重要なパーツだと言われています。
そして昨今、タイヤの目覚ましい進化が、世界最高峰のMoto GPなどのバイクレースでハイレベルな戦いが繰り広げられる、一つの原動力になっています。
そこで今回は、数あるバイクパーツの中で、唯一路面と接している「タイヤ」について、色々な角度から検証していきたいと思います。
1.タイヤは何でできている？
黒くて丸くて地味な存在ですが、バイクパーツの中で実は最も重要な存在であるタイヤ。まず初めに、バイク用のタイヤはどのような素材でできているか説明していきます。
タイヤの表面の素材は、ゴムの木から加工された「天然ゴム」と石油精製品ナフサから作られた「合成ゴム」です。それらを混ぜ合わせて、補強剤（カーボン・シリカ・硫化剤・柔軟剤）で調合してタイヤは作られています。タイヤの黒い部分は、カーボンブラックの色です。
タイヤの内部ですが、ゴムだけでなくポリエステル・ナイロン・レーヨン（カーカス部分）や、スチール（ベルト部分）および高炭素鋼（ビート部分）が使用されています。
2. タイヤの構造
次にタイヤの構造を見ていきましょう。タイヤの見た目は黒いゴムという感じですが、内部には色々なものが詰まっています。そして各々に役割があり、それらがバランスを保ちながら私たちが乗るバイクを支えてくれています。
- カーカス：タイヤの骨格を形成するコード層で、内部の空気圧を保持し、タイヤが受ける荷重・衝撃に耐えます。
- トレッド：路面に直接接している部分で、カーカスを保護します。タイヤメーカーやグレードによって様々なパターンのものがあり、摩耗耐久やスリップ防止に役立っています。
- サイドウォール：走行時にたわむ部分で、カーカスを保護しています。伸び縮みがスムーズにいく構造になっています。
- ビード：タイヤをリムにしっかりと固定する部分。
- ビードワイヤー：強力なピアノ線を何本も重ねて、空気圧によるカーカスの引っ張りを受け止めます。
- ベルト/ブレーカー：剛性を高める為に、トレッドとカーカスの間に入れる補強コード層。
- インナーライナー：内側の空気を包む役割をする部分で、チューブの役割をします（あるのはチューブレスタイヤのみ）
タイヤ交換時ですら、タイヤがこんなに沢山のパーツから成り立っているとは思ってもいませんでした。まさにタイヤは縁の下の力持ち的存在ですね。
3. バイクのタイヤの種類
バイクのタイヤにも大きく分けて2種類あるのはご存知でしょうか。現在のバイクのタイヤには、ラジアルタイヤとバイアスタイヤの2種類が採用されています。それでは各々の特徴と用途を見ていきましょう。
・ラジアルタイヤ
高速耐久性に優れた構造で、主にスポーツバイクに使用されています。
カーカスのコードはタイヤ側面から見てラジアル（螺旋状）に並んでおり、中心線に対し0度～20度のベルトによって締めつけられています。剛性はベルトだけで決定できますので、トレッドとサイドウォール の剛性を別々にコントロールすることが可能です。そのため、バイアスよりも柔らかいグリップ力のあるゴムを採用できるなど、設計の自由度が高い構造です。
私の所有しているドゥカティ848はラジアルタイヤを履いています。
・バイアスタイヤ
カーカス及びブレーカーのコードを中心線に対し30～40度の角度（バイアス）で交互に貼り合わせています。
ラジアル構造に比べて、設計自由度は小さいですが、路面のギャップをタイヤ全体で吸収しますから、ラジアルよりも乗り心地が良いのが特長でアメリカンやスクーターなど、快適性を求められるバイクに装着されています。
私が所有しているBMW・R100RTにはバイアスタイヤを採用しています。
4. タイヤの役割
・タイヤの役割は？
タイヤの素材や構造を紹介してきましたが、タイヤの役割は「グリップ」だけではありません。下記の４つの重要な役割を担っているのが、二輪車のタイヤなのです。
- 車体とライダーの重量を支える
- 駆動力と制動力を地面に伝える
- 方向転換をして維持する
- 路面からの衝撃を吸収する
・リアタイヤとフロンタイヤの違い
そしてこれらの役割は、意外かもしれませんがほとんどリアタイヤ（後輪）によるものです。
ライダーが握っているハンドルの下にあるのがフロントタイヤ（前輪）だから、フロントが重要では？と思うかもしれませんが、「バイクはリアタイヤがメインでフロントタイヤは追従しているだけ」なのです。
現行車のほとんどは、リアタイヤ幅が太く・フロントタイヤ幅が細いですよね。
私の愛車ドゥカティ848EvoコルセSEは、フロントタイヤが120/70ZR17に対し、リアタイヤが180/55ZR17です。これには理由があって、リア・フロントそれぞれの役割が異なるからです。
リアタイヤは、エンジンパワーやライダーなど、大きな荷重を受け止めます。直進する時はもちろんですが、コーナーリングの立ち上がりではバンクした状態でパワーを路面に伝えてトラクションを稼ぎます。
そして旋回力や方向安定性を発揮する為には、高いグリップ力が求められ、リアタイヤはそれに見合った太さが必要になってきます。
それに対してフロントタイヤは、リアタイヤの傾きに追従しており、旋回時には「つっかえ棒」的な役割をしています。常にステアリング軸で首を振っている状態なので、ベタッとグリップしていません。
フロントタイヤはリアに追従するだけなので、細くて軽量な方が都合が良いのです。さらに旋回時は、リアタイヤより外側の軌跡をたどるため、リアに比べて強く丸みが付いた形状になっています。
5. タイヤの選び方
次は、タイヤの選び方について言及していきます。
少し前のモデルも混ざっていますが、タイヤ交換の際に下記の表を見ながら次のタイヤを選んでいます。
ドゥカティ848には “Pirelli ロッソコルサ2” ・6月まで乗っていたスラクストンRには “Michelin ロード5”を採用していました。
・スポーツ系のラジアルタイヤ選び
スーパースポーツバイクやサーキットを走る場合は、上記表の左からレース、レーシングレプリカ及びハイグリップタイヤを選ぶと良いと思います。但し、左に行けば行くほどタイヤの寿命が短い と思っておいて下さい。中には3,000キロも走れないタイヤもあります。
一方、ネイキッドバイクやカフェレーサーでそんなに攻めた走りをしないのであれば、ハイグリップ、スポーツ及びツーリングタイヤを選んで下さい。先ほどとは真逆ですが、右に行けば行くほどタイヤの寿命が長くなります。
以前スラクストンRに履いていた、ピレリ・エンジェルGT２やミシュラン・ロード５は、走行距離10,000キロ以上走ることができました。
あくまで私個人の走り方によるものなので、全てのライダーさんに当てはまるかは分かりませんが、参考にして下さい。
・乗り心地の良いバイアスタイヤ選び
ハーレーやSRなどには、一般的には上記のようなラジアルタイヤではなく、バイアスタイヤもしくはセミラジアルタイヤを使用することが多いです。
3章でも触れましたが、理由としては乗り心地が良いこと、そしてアメリカンなどの車種はスーパースポーツのようには深くバンクさせないので、高価で寿命が短いラジアルタイヤ（ハイグリップタイヤ）を履く必要がありません。
以前ハーレー・ファットボーイに乗っていた頃はミシュラン・コマンダー２を履いていました。
このようにバイクの種類によって、使うべきタイヤは変わってきます。同じようなグレードのタイヤでも、メーカーによって乗り味や特色が違うので、乗り比べてみるのも面白いと思います。
6. 最後に
一昨年くらいまでの私は何気なくバイクに乗って、寿命がきたらタイヤを交換しているだけのライダーでした。
それがタイヤの重要性や進化を感じたのは、自身がハイグリップタイヤを履いてサーキットを走るようになったのがきっかけでした。
そして今回、こうやってタイヤの素材や構造など調べていくと、また新たな発見がありました。バイクの構造を全くわかっていなかったバイク初心者の頃は、バイクはフロントで（右腕と左腕で）曲がるものだと考えていたくらいですから・・・（汗）まさかフロントタイヤがリアタイヤを追従するものとは・・・、本当にバイクはそしてタイヤは奥が深いですね。
そしてタイヤの役割を意識してバイクに乗るだけで、以前より乗りやすくなったように思います。
次回は、そのタイヤ（バイク）を停めることができる装置「ブレーキ」について詳しく書いていこうと考えています。タイヤと共に重要な役割を担うブレーキについて、乞うご期待下さい。
