嬉しいことに、私の周囲にはバイクに乗る友人が増えてきました。
30代後半〜50代の年齢になる私の友人たちは愛車の写真だけでなく、ツーリングの途中で出逢った美しい光景、名物のおいしそうな食事の写真などと共にSNSへレポートをアップしています。
バイク好き、旅好きな私としてはそんな生き生きとした彼らのレポートを読む度にとても羨ましく思っています。
そういえば、昨今のバイクの購入は多少なりとも自由に使えるお金をもっている中高年男性が支えているというのです。
日本自動車工業会が発表した資料によると、バイクに乗る人の平均年齢が50歳を超えているというデータがありました。
また一方では、購買層となってバイク業界を支えている中高年男性にバイクを敬遠する動きも見られるというのです。
興味や関心があっても、バイクに乗ることをあきらめているとのこと。
そういった現象はなぜ、どういう事情から生まれるのでしょうか。
まず、中高年男性がバイクを敬遠する理由について考えていきましょう。
なぜバイクを敬遠する中高年層が存在するのか?
若者のクルマ・バイク離れが進んでいる現実は、賢明な読者の皆さんならご存じでしょう。
クルマ、そしてバイク離れが進む大きな理由は過大な経済的負担です。
様々なセンサーやブレーキ機能など、最新鋭の安全性能が追加されるにつれて車体価格が上がります。中高年層に比べ比較的収入の乏しい若者が購入を諦めてクルマやバイクから離れ、電動アシスト自転車や電動キックボードに移行しているのも理解できます。
実は中高年男性がバイクを敬遠する動きにも似たような事情が背景にあります。
一般的な収入の家庭で考えると、通勤や家族の事情で必要だと判断して自動車は購入しても、今後お金が掛かる子どものために貯金し、併せて老後への蓄えを企てる生活の中では完全な嗜好品であるバイクの購入はためらわれます。家庭に高価な移動手段は2つといらないと判断されがちです。
さらに職場など社会的な立ち位置、家族などの人間関係にがんじがらめになっている中高年男性にバイクを楽しむ余裕がないこともあるでしょう。
事故を起こすと大ケガをするバイクは危ない、不良の象徴でしかない、エンジンを吹かす音がうるさい、ご近所や世間からの印象が良くない、歳を取ってから乗るものではない、家族の理解が得られない、加齢による体力や身体機能・感覚の衰えに抗い切れない…こうして世間体を気にして不安を抱いておられる方の気持ちもよく分かります。
また、年齢が上がるにつれて変化する運転者の嗜好が挙げられます。
移動手段の快適性、実用性、安全性を求める傾向が強くなってくるため、同じ買うならバイクよりもクルマを選択しているのです。
高齢化が進む現代社会において、親類縁者などからの心配や強い反対によってバイクを降りざるを得ないライダーも増えています。
つまり中高年男性は様々な不安や世間体といった目に見えないワイヤーロックで幾重にも締めあげられ、しがらみで身動きの取れない人生に疲れ果てているのです。
人生に疲れたオヤジにこそ原付二種バイクを勧めたい!
ここで私はあえて、そんながんじがらめになっている中高年男性…俗にいうオヤジにこそバイクを、そしてバイクでの旅を勧めたいのです。
私が人生に疲れたオヤジに勧めたいのは「原付二種」と呼ばれる排気量50〜125㏄未満の原付二種(第二種原動機付自転車・道路交通法では普通自動二輪車)です。
原付バイクとは、道路運送車両法に基づいた排気量125㏄未満のエンジンまたは1.0kW以下のモーター出力をもつ原動機付自転車を指します。
しかし原付二種とは、よく街中で見掛ける50㏄未満の原付一種とは違う車種のバイクです。エンジンは一回り大きいものの、外見では見分けが付きにくいのです。
外見での見分け方は、黄色またはピンク色をしたナンバープレートのバイクです。そしてナンバープレートの下に白い三角の印が、またフロントフェンダーの先には白いくちばしのようなシールが付いています(海外メーカー製品には例外あり)。
なぜ、そんな原付二種がお勧めなのか、私なりに考える理由をお話ししていきます。
バイクは手軽にひとりで行動する贅沢を味わえる
バイクは基本的に自分ひとりの乗り物です。自分でアクセルを回し、進路を決め、全ての行程を把握し、進むか休むかなどを判断します。
つまりバイクの運転では自分がキャプテンです。ツーリングではひとり旅という冒険物語の主人公です。そう考えるだけで心が高ぶりますよね。
中高年辺りまで歳を重ねたオヤジには、トイレと風呂以外で自らひとりになれる時間はいったいどれだけあるのでしょうか。
断っておきますが、自ら画策してひとりになれる時間です。家族や職場の仲間、パートナーにほったらかしにされている時間ではありませんよ。
思えば、そんなにないんじゃないですか?
バイクに跨ってひとりになることで、一時的ながら様々なしがらみから解放されます。
延々と続く道、初めて訪れる場所、出会う人との交流、風に撫でられる感触、思い知る新しい価値観…そういった新しい刺激を得ることで、これまですり減らしてきた自分自身の心を再び研ぎ上げるきっかけを得ることができるのです。
誰にも気兼ねなくひとりで行動できる時間こそ、最高の贅沢ではないでしょうか。
家族や部下に遠慮しながらどこか息が詰まりそうな毎日を送る、そんな生真面目なオヤジには特にバイクをお勧めしたいですね。
原付二種は法令的にも制限が少なく、機動性が発揮できる
原付二種バイクは排気量50㏄以下の原付一種のバイクと違って二段階右折の必要がなく、公道での制限速度も60km/hです。つまり一般道路では自動車とほぼ同等の機動性を発揮できます。
また車体が軽い原付二種バイクは中型〜大型バイクよりも取り回しが容易で、小柄な方や女性にもお勧めできるバイクです。クラッチ操作などが心配な方も、大型バイクほど大変な動作ではないので安心してください。
原付二種は維持費が比較的安く済む
自動車や大型バイクってのは、とにかく税金や保険が掛かる案外厄介な乗り物ですよね。
しかし原付二種は快適な機動性の割に比較的維持費が安く済むバイクです。お小遣いの厳しいオヤジに優しい乗り物なのです。
125㏄クラスのバイクを例に考えてみましょう。
【2023年6月現在】
90㏄〜125㏄未満のバイクでの軽自動車税は年額2,400円。90㏄未満であれば年額2,000円となり、原付一種と同額になります。
自賠責保険料は1年間で6,910円となります。60か月(5年間)一括で納めるなら13,310円となるので、長期契約をする方がよりお得になります。また自動車重量税は掛からず、車検は免除となります。
あとはガソリン代、駐輪場代、バイク任意保険といった個別の維持費が別途必要になります。それらも自動車や大きいバイクと比較しても、そう大きな出費にはなりません。
バイクを嗜む大人にとって、制約こそ旅の醍醐味
自動車並みの速度で走行できる原付二種バイクですが、125㏄未満のバイクは高速道路や高規格の自動車専用道の利用はできません。
逆に言えば、不便なのはその程度です。近距離ツアラーにとってはほぼノーデメリットでしょう。
過去に大きいバイクに乗っていたライダーにとっては、加速力などは確かに物足りないかも知れません。しかしそんな非力さもまたバイクの「味」なのです。
流れる景色や地域の風情を楽しみながら身近な目的地に向かう旅に原付二種は最適です。長距離移動を考えるなら、時間と体力に余裕をもたせて予定を組めばよいのです。
できないことを嘆くより、できる枠の中で工夫して大いに楽しむ。
これぞ大人が主役のバイクの旅、その醍醐味であります。
誰かを乗せて近距離ツーリングにだって行ける
原付二種では、二人乗りも認められています。小学生の子どもをタンデムシートに乗せてどこそこまで走ってきたよ、なんて話を友人からよく聞きました。
父親の背中越しにバイクの英才教育を受けているそのお子さんの将来が楽しみですね。また日記や作文でツーリングの思い出なんて書き記せば、お父さんは間違いなくヒーローです。
ただ子どもが成長してからは、嫌がってどこにも一緒に出掛けたがらない…なんてさみしいボヤキも聞こえてきますが。
また、タンデムシートに女性を乗せてバイクデートしている若者も見かけます。
かつての私もそうでした。
当時付き合っていた女性を乗せて近所の飲食店に食事へ出掛けたり、綺麗な夜景が見える場所に一緒に出掛けたりしていましたね。
もう遠い遠い昔になりましたが。
走った記憶、出掛けた思い出をタンデムライドで強く深く共有できる乗り物であるバイク。バイクを介することで、体験はより鮮烈に心に残るのです。
原付二種にチャレンジする際の留意点
これから俺も原付二種にチャレンジするぞーっ!と気持ちが高まってきた方々へ、留意点をこちらにまとめておきます。
免許制度について
原付二種のバイクに乗るために最低限必要な免許は、小型限定の普通自動二輪免許です。
原付一種の免許は自動車免許に付帯しているので、改めて取得する必要はありません。しかし原付二種については「原付」となっていても、実際に必要な免許は小型限定の普通自動二輪免許です。つまり免許を新たに取得しなければなりません。その取得のための時間や費用が必要です。
また、過去に限定のない普通自動二輪免許、大型自動二輪免許を取得している人であれば、その免許のままで原付二種を運転することができます。
但しスクーターなどオートマチック車(AT車)限定の普通自動二輪免許、大型自動二輪免許を所持している方は、原付二種のバイクを運転する場合であってもAT車限定となるので、注意が必要です。
AT車限定の小型限定普通自動二輪免許が欲しいという場合は、普通自動車免許を持っていれば教習所で最短で2日間で教習を終えることもできるそうです。
つまり週末や連休をうまく活用して取得することも可能なのです。
お求めの場合は各教習所へ直接お問い合わせ下さい。
バイクの任意保険は入っておいた方が良い
バイク任意保険については強制ではないし、ライダーによってバイクの用途や走行距離が違うので金額は一概には言えませんが、万が一の為にも加入しておくことをお勧めします。
対人、対物保障などの内容を自分の行動プランに合わせて設定することで、保険料が変わり、費用が節約できる可能性があります。
また、バイク保険において代理店型よりも、ダイレクト型(通販型)の保険料の方が安くなる傾向があります。自働車を所有されている場合は、自動車保険の付帯条件などを改定して加入しても良いでしょう。
その辺りはご自身のお小遣いや家計と相談の上で決めても良いと思います。
さあ、出掛けよう!まだ風になって走れるうちに
中高年になるまで生きていると、こんな事実に気付いているのではないですか?
人生の中で満足に動ける時間は案外短いものだ、と。
来年が、いや明日が無事に来ることは実はありがたいことだ、と。
今日という日が自分の人生で一番若い日だ、という格言もあります。
そう、思い立った今がチャンスです。
現在の国内主要メーカーでの原付二種バイクはロードスポーツやスクーターが中心であり、一昔前のように多様なラインナップではありませんが、走る楽しさは変わりません。また、中古市場ではもう生産されていない形式のバイクも多数販売されています。
まずは教習所のホームページをのぞいてみる、バイクのカタログを眺めてみるところから始めてみませんか?
そしてバイクの購入まで、ツーリングまでの具体的な計画を立ててみて夢を見ているのもまた楽しいじゃありませんか。
そんな時の貴方の顔つきはきっと少年の頃に戻っているでしょうね。
新しい経験でドキドキすることが精神的な若さを保つ特効薬であり、小さな成功体験の積み重ねが前向きな生き方をしていく自信に繋がります。
そして語れる旅の経験談が増える程、趣味で繋がる人間関係が広がっていくのです。
さあ、顔を上げて出掛けましょう!
まだバイクと共に風になって走れるうちに、オヤジが主人公になれるツーリングへ。