私なりの「HAWK11はこうすればよかった」案~読者の指摘に答えます

少し前「【シリーズ・デザインを考える】XSR700とHAWK11は工夫はすごいが」という記事を書いた。

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すると読者からこのようなコメントをいただいた。

「HAWK11に興味を持っていて、腑に落ちない点を指摘していただいた感があります。ココをこうすればよい、といった提案はあるでしょうか」

HAWK11を、次に購入するバイクの候補に挙げている模様である。

私がホンダに対して、バイクの改良点を提案できる機会なんてそうはない。

「私ごときが」という気持ちはもちろんあるが、これほど魅力的なオファーにあらがうことはできない。

私なりの「HAWK11はこうすればよかった」案を提示してみる。

目次

上3分の1は完璧

アサオカミツヒサ

本稿で考察するのはデザインだけである。機能や性能、乗り味などは対象としていない。

これは元記事でも言及したが、HAWK11を真横にして水平に3等分したときの、上部の3分の1は完璧である。

上記の写真がそのHAWK11の上3分の1である。

HAWK11のデザインには良いところと悪いところがあり、この2つの要素があるから「惜しい」とかんじるのであり、「もっとこうすればよかったのに」と思えるのである。悪いところしかなければ「格好悪い」で片づけてしまうだけである。

そのため、私の改良案を提示する前に、HAWK11の良いところを紹介したい。HAWK11の格好良いところを知れば、私の改良欲を理解していただけると思う。

1)ロケットカウルからタンクの流れが良い

私がHAWK11の上3分の1のデザインに感心するのは、1)ロケットカウルからタンクの流れと、2)前部と後部の断絶の見事さ、の2点である。

まず1)についてだが、ロケットカウルのなんと美しいことよ。ミラーを、カウル上部にもハンドルにもつけないことが、こんなにもバイクを格好良くすることは発見である。いや、カスタムバイクではよくみる手法である。しかしこれは世界のホンダ、優等生のホンダのバイクである。だからこそこの異形ミラーには高い価値がある。HAWK11のオーナーは、このミラーだけは社外品に換えないほうがよいと思う。

そして丸みを帯びたロケットカウルを引き受けるタンクは、打って変わってエッジが効いている。これはなかなかチャレンジングなデザインであるが、成功している。

HAWK11の色には「カウル銀、タンク黒」と「カウルもタンクも青」の2色が設定されているが、私なら断然青を選ぶ。青のほうが、ロケットカウルの丸みとタンクのエッジがよくみえるからである。

2)前部と後部の断絶の見事さ

次に2)前部と後部の断絶の見事さ、についてであるが、シート下のデザインは優等生のホンダの真骨頂というべき清潔なラインでつくられている。ホンダはこのような知的なラインが本当にうまい。

そして、ロケットカウルというクラシカルなツールに、清潔かつ知的かつ現代的なリアをくっつけたのはデザイナーの力量である。もう一度、カウル→タンク→サイドカバー→リアカウルを確認してみよう。

前半分とうしろ半分は明らかにデザインコンセプトが異なる。しかも前半分はボリューミーなのに、うしろ半分は軽快だ。それなのに破綻がない。

ここまでは、デザイナーは良い仕事をしている。

改良案:下部をドカとトラに置き換えてみた

それでは私のHAWK11改良案を紹介したい。

以下の2枚の写真は私がつくった合成写真で、上の写真がドカティGT1000とHAWK11を合体させたもの、下の写真がトライアンフ・スラクストンとHAWK11を合体させたものである。

「ホンダHAWK11」のデザインの欠点は下3分の2にある、というのが私の意見である。

そこで「ドカティHAWK11」と「トライアンフHAWK11」をつくってみたわけだが、やっぱり似合った。

GT1000とスラクストンの共通点は、純粋無垢かつ伝統的なカフェレーサー・スタイルである点だ。以下は2台のノーマル状態の写真である。

私は、ホンダのHAWK11デザイン・チームは、現代版カフェレーサーをつくりたかったのではないかと推測している。つまり、純粋無垢かつ伝統的なカフェレーサーをベースとしつつ、ホンダらしく未来志向のバイクにしたかったのではないか。

そうだとしたらHAWK11の下3分の2はうまくいかなかった。なぜか。それはどうしてもアフリカツインの部品を使わなければならなかったからである。

エンジンのデザインが風景にそぐわない

もう一度ノーマルのHAWK11を確認してみる。どうしても下3分の2が凡庸(ぼんよう)に感じられる。

しかしこの下3分の2の凡庸なデザインは、アフリカツインであれば支障はない。なぜならアフリカツインなら、下に長く伸びたフロントカウルにエンジン上部が隠されてしまうからだ。

そしてこれも私の偏見なのだが、オフ車のエンジンにはあまり高いデザイン性が求められない。オフ車のエンジンに必要なのはタフさと性能だからだ。

しかしカフェレーサーではそうはいかず、エンジンも風景になっていなければならないのである。だからアフリカツインのエンジンのデザインはHAWK11に全然そぐわないのである。

マフラーが格好悪い~コストダウンがにくい

あれだけ格好良いロケットカウルをつくったHAWK11デザイン・チームが一体なぜ、といいたくなるほどHAWK11のマフラーとサイレンサーは格好悪い。

以下の写真はHAWK11のサイレンサー周辺を切り出したものだが、スクーターのそれのようにみえないだろうか。少なくとも、格好良いカフェレーサーのサイレンサーにはみえない。

そして以下の写真はスラクストンのサイレンサーである。ツヤなし仕上げが見事で社外品に変えたくないほど美しい。

マフラーとサイレンサーにこれだけのクオリティの差があるのは当然で、HAWK11は140万円だが、スラクストンは200万円以上もする。

私が提案するHAWK11のもう一つの改良点は、お金をしっかりかけてつくり込むことである。

まとめに代えて~カスタムの素材になるのも難しそう

HAWK11の改良点を提案してみたが、では、HAWK11をカスタムすれば理想のカフェレーサー・スタイルになるのかというと、私は難しいと考える。

なぜならカスタムバイクのベースは、中立的な素材である必要があるからだ。HAWK11のベースはアフリカツインなので、つまり素材がバリバリのオフ車なのでまったく中立的ではない。

そしてそもそもHAWK11自体がアフリカツインのカスタム車といえる。この観点からHAWK11をみると、オフ車をベースによくここまでカフェレーサーにできたな、ともいえるのである。

それでも無理矢理HAWK11を改良するなら、「ガワ」であるロケットカウルやタンクやサイドカバーなどを、中立的な素材バイクにのせることはできるだろうが、しかしそれはHAWK11のカスタムではなく素材バイクのカスタムになってしまう。

良いところもあるだけにHAWK11は本当に惜しいバイクである。

私事であるが、HAWK11がデビューしたときインターネットや雑誌でみて「なんか違うな」と感じたものの、しかし「もしかしたら実物をみたら印象が変わるのではないか」と思いホンダの販売店にいってみた。まじまじと眺めたのだが「やっぱり違う」と思ってしまった。

HAWK11の140万円は、ホンダは「バーゲン価格で出している」と思っているかもしれないが私には高額だ。だから140万円のお金をつくることができたら、もう少しお金を足して心の底から格好良いといえるバイクを選びたい。

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この記事を書いた人

●著者紹介:アサオカミツヒサ。バイクを駆って取材をするフリーライター、つまりライダーライター。office Howardsend代表。1970年、神奈川で生まれて今はツーリング天国の北海道にいる。
●イラストレーター紹介:POROporoporoさん。アサオカの親友。

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