あなたの乗っているバイクのエンジンは何気筒ですか?
バイクという乗り物の特徴は、2輪でバランスを取りながら傾けて走ること、そして人間とエンジンが非常に近いことです。そのエンジンの特徴が、バイクの個性を決定づけると言われています。
現在市販されているバイクのエンジンは、単気筒・2気筒・3気筒・4気筒・6気筒があります。これまで筆者は大型バイク6台に乗ってきましたが、MVアグスタの3気筒以外は全て2気筒。なぜここまで2気筒のバイクに惹かれてしまうのでしょうか?その魅力について初心者ならではの視点から、乗り味や感覚的なことを中心に綴っていきたいと思います。
※ちなみに筆者の大型車遍歴は、下記の通りです(カッコ内は年式)
- ハーレーダビットソン・ファットボーイ(2017年)
- MVアグスタ・ブルターレドラッグスターRR(2017年)
- トライアンフ・スラクストンR(2020年)
- ドゥカティ・900SS(1997年)
- ドゥカティ・848EvoコルセSE(2012年)
- BMW・R100RT改(1981年)
2気筒エンジンとは?
2気筒エンジンとは気筒数が2つ、つまりシリンダーが2つあるエンジンの形式になります。
気筒数が少ないほど、構造がシンプルで軽くなるのですが、出力が小さくなり振動が大きくなります。それなら大型車の4気筒エンジンが高出力で振動が少なくて良いと思いますが、一般公道ではハイパワーすぎてマシンの能力を発揮できません。そしてシリンダーが4つあるので、車体幅が大きくなり、重量も重くなります。
対して大型車の2気筒エンジンは、大排気量が故に低回転でも力強いトルクと加速感があり、重量も4気筒より軽いので、一般公道では軽快に走ることができます。但し鉄を多用しているハーレーの重量は、通常の大型4気筒より重たくなっています。
それでは、筆者の今まで乗ってきた2気筒エンジン・4メーカーの特徴や乗り味などを紹介していきたいと思います。
ハーレーダビットソンの2気筒
・ファットボーイ
筆者が人生で初めて所有した大型バイクが、2017年のハーレーダビットソン・ファットボーイ。映画ターミネーター2(1991年上映)で、シュワルツネッガー扮するT-800が乗っていたバイクの後継モデルです。エンジンは、空冷4ストロークV型2気筒OHV2バルブのツインカム103。排気量は1680ccなので、840ccのシリンダーが2つということになります。そしてハーレーのエンジンの特徴は何と言ってもクランク角45度Vツインです。
・ハーレー伝統の45度Vツイン
45度というシリンダーの角度が、ハーレーの不規則なリズムを奏でる要因になっています。そして45度Vツイン・レイアウトに加え、2つのピストンが1つのクランクピンで連結されています。
前シリンダーが爆発した時と、後ろシリンダーが爆発した時とでは、クランクが回転する量が異なる上に、前後でクランクを回す抵抗も違うので、回転スピードが速くなったり遅くなったりを繰り返しています。
この「ドッドドッドドッドドッド」という空気が揺れる鼓動こそが、ザ・ハーレーサウンドですよね。
そして大排気量が故に、低速域でも野太いトルクで進んでいくのが、ハーレーのV型2気筒の魅力でもあります。アメリカンクルーザーらしく、見通しの良い広い道をどこまでもドコドコと走りたくなるエンジンですね。
・空冷から水冷へ
しかしながら、排ガス規制が年々厳しくなり、昨今までずっと空冷を作り続けてきたハーレーダビットソンも、変化を迫られております。2020年度から展開しているモデルは水冷エンジンが搭載されており、従来の音や鼓動感を求めるのならば、中古での空冷2気筒エンジンを選択する他ありません。
ドゥカティの2気筒
・Lツインエンジン
ドゥカティの2気筒と言えばLツインがあまりにも有名です。90度V型2気筒エンジンなのですが、エンジンの配置がL型に見えるため、そう呼ばれるようになりました。幸運なことに筆者は、空冷と水冷のLツインエンジン車を所有することができました。
・空油冷の900SS
2022年8月まで所有していた900SSは、空油冷4ストロークV(L)型2気筒 OHC2バルブのエンジンを搭載しています。燃料供給装置はキャブレター式で、排気量は904cc。30年以上前に開発されたエンジンなので、現代のバイクと比べると非力感は否めませんが、アクセルワーク・ギアチェンジ・ブレーキングを駆使して走れば、十二分に走れるバイクです。そして現在のドゥカティ・スポーツバイクにはない、空冷エンジン特有の鼓動感・トルク感を肌で感じれるのが900SSです。
・水冷の848
そして現在所有している848Evo コルセSEは、水冷4ストロークV(L)型2気筒4バルブのエンジンを搭載しています。
エンジン名は、テストストレッタ・エボルツィオーネで、排気量は849cc。848の兄貴分である1098エンジンをダウンサイジング化し、一般的な速度域からハイスピードレンジまでスムーズに加速してくれるエンジンになっています。特にワインディングやサーキット走らせた際の力強いトルク感は、The Ducatiを感じさせてくれます。
水冷と空油冷のLツインは味付けや音質こそ違いますが、ガラガラ音を奏でるドゥカティらしい2気筒です。Lツインの鼓動感とトルク感は、何か生き物に跨っているような不思議な感じがします。ある人は、「Lツインの鼓動感は馬が後ろ足で地面を蹴って進む感覚」と言っていましたが、乗ってみるとまさにその通りで驚きでした。そして国産4気筒にはないエンジンの荒々しさとこの鼓動感が、ドゥカティスタを魅了するのだと思います。
トライアンフの2気筒
・並列2気筒エンジン
筆者がV型2気筒のハーレーから並列2気筒のトライアンフに乗り換えたのは、2021年の夏。スラクストンという、並列2気筒を搭載した本場イギリスのカフェレーサーに魅せられて、買い替えを決意しました。並列2気筒と言っても、クランク角(位相角)が180度、270度、360度とメーカーによって様々です。
・スラクストンR
昨今のトライアンフ並列2気筒エンジンは、270度クランクを採用しています。360度が1回転ですから、270度だと90度ずれてきます。これが90度V型2気筒(ドゥカティなど)と同じタイミングになり、気持ちの良いエンジン音を奏でてくれます。筆者のスラクストンRのエンジンは、水冷4ストローク並列2気筒、排気量は1200cc 。つまり、600cc のシリンダーが2つ並列に並んでいるということです。
一見、昔の空冷・キャブレターに見えますが、これは往年の空冷トライアンフをオマージュしているデザインで、実際はラジエター付きの水冷エンジン・インジェクション仕様になっています。
・よく走るカフェレーサー
エンジンフィーリングは、ハレーやドゥカティに比べると静かで紳士的な感じがしますが、低速トルクも粘るし、アクセルを開ければグイグイ進んでくれます。特にスラクストンRやスピードツインに積んでいる2気筒エンジンは、最高出力が97ps/6,750rpmで、トライアンフ2気筒の中でもスポーティーな味付けになっています。高速走行もワインディングも軽快に走れるバーチカルツインは、カフェレーサーとは思えない仕上りです。
BMWの2気筒
・水平対向エンジン
BMWの2気筒といえば、左右に張り出した迫力満点の水平対向エンジン。1923年の登場以来、基本的な構造を変えることなく今年でなんと100周年を迎えます。そして左右のピストン運動の往復が、2人のボクサーが打ち合っているように見えることから、ボクサーエンジンと言われるようになりました。
・横置き&シャフトドライブ
シリンダーが左右に突き出したエンジンを、ハーレーやドゥカティのような縦置きではなく横置きに搭載したことが、当時は衝撃だったのではと思います。さらにクラッチやミッションをエンジンケース内に収め、シャフトドライブにする画期的なアイデアは、航空機を作っていたBMWならではの発想です。多くのメーカーがチェーンドライブを採用する中、BMWとモトグッチはシャフトドライブのバイクを多く制作しています。
・R100RT
私の2023年5月に購入したBMWのR100RT(1981年製)は、空冷OHVの1000cc・2気筒ボクサーエンジンを搭載しています。そしてケーヒンのFCRレーシングキャブ仕様、少々荒々しくて楽しいバイクに仕上がっています。取り回しは少々重くて大変ですが、乗り始めると意外にも軽快で走りやすい印象です。この沢山カスタムされたR100RTのエンジンだけは、42年前の当時モノ(ノーマル)。クセが強い空冷ボクサーエンジンですが、乗り手とバイクが人馬一体になれば、現代のバイクをカモれるポテンシャルを秘めています。これからどんどん乗り込んで、自分のモノにしていきたいと思っています。
まとめ
ハーレーの45度V型2気筒・ドゥカティの90度L型2気筒・トライアンフの270度並列2気筒・BMWの水平対向エンジンを、それぞれインプレッションさせていただきました。
どのメーカーの2気筒も個性や特徴があって、乗り手をワクワクさせてくれる素晴らしいエンジンです。そして各メーカーは、自転車にエンジンをつけた単気筒バイクから始まり、歴代のメカニック達が研究に研究を重ね、優れた2気筒に進化させていったことを忘れてはなりません。
そしてこのコラムを書きながら、改めて私は2気筒が好きなんだと再認識しました。しかしこの先、燃料を使った内燃機関がなくなっていくことが予想されますが、当面の間バイクの2気筒エンジンはまだまだ進化していくことでしょう。
次の投稿では、4気筒でも2気筒でもない、3気筒の魅力について迫っていきたいと考えています。