僕は25年ぶりぐらいのリターンライダーだ。若かりし頃にバイクに乗っていたが、今思うとものすご〜く適当に乗っていたと思う。メンテのメの字も知らずに、というかそんなことすら考えずに乗っていた。要はカッコいいからバイクに乗っていたのだと思う。なんせツーリングなんてほとんど行かなかったぐらいだから。
そんな僕も、今では立派な?オジサンになり、「バイクに乗る」ということにカッコ良さとはまた違った面白さを感じながら乗っている。なのでバイクへの愛着も当時とは比べものにならないぐらいあり、自分でメンテできるところは自分でするようになった。
当然、今回のタイトルにあるように「チェンシコ」も定期的にする必要が出てくる。
さて、僕のようにバイクのメンテナンスに興味が無かった人や、バイクに乗り始めたばかりの人からすると「チェンシコ」ってなんやねん?となるのは言うまでもない。僕にしてもそうだ。Twitterなんかで時々見かけるけど、今さら人には聞けないし、どことなく言葉に卑猥な響きを感じるのは僕だけだろうか。
「チェンシコ」とは、読んで字の如しチェーンをシコシコ掃除すること。どこの誰が言い出したのかは知らないが、なんとなく関西人のような気がする。(僕の偏見かもしれない)
今回紹介するチェンシコの方法や頻度、考え方などは、あくまでも個人の見解です。実際のチェンシコは各自の責任において行なってください。
なぜ「チェンシコ」が必要なのか?
バイクのチェーンはエンジンのパワーをタイヤに伝える重要な部分だ。それなのに常に外気にさらされ、走行中には道路のホコリや砂、泥や水などで汚れていく。
その汚れなどが原因となり、錆が発生しチェーンが傷んでいくのだ。傷んだチェーンのまま乗っているとどうなるのか?というと、エンジンからのパワーを最大限に伝えることができなくなるし、最悪の場合、走行中にチェーンが外れたり切れたりして重大な事故にもなりかねない。
とは言え、「チェーンが切れた!」なんてことを周りのライダーから聞いたことはない。よっぽどのこと、それこそ何十年も屋外に放置されたバイクで錆まくりのチェーンぐらいにならないと切れることなんてないとは思う。
現実的な話をすると、チェーンが切れたり劣化が進んで交換が必要になった場合、決して安くは無い費用が必要になる。チェーン代と工賃などを考えると2万〜3万円ぐらいは覚悟しておいたほうがいい。また、走行中に切れた場合だと、仮に無事故の場合でも自走はできないのでレッカー代が必要だ。
そう考えると「チェンシコ」はやっておいた方がいい、というレベルの問題ではなく、必ずやっておくべき定期作業となる。
チェンシコ不要論
ちょっと話は逸れるが、世の中にはチェンシコ、つまりチェーンに注油は不要だ、という説があったりする。現在の市販車のチェーンはほとんど「シールチェーン」(上記画像のチェーン)と呼ばれるもので、オイルシールが備わっている。
そのオイルシールがグリスを内部に留めているので、それだけで役割としては十分だから注油は不要、というものだ。
これについては、どっちの論を信じるか的なことになり個人の判断に委ねられるものだろうが、僕の見解としては注油は必要だと思っている。というのも、オイルシールにも多少なりとも摩擦抵抗が生じるだろうし、ローラーとスプロケットの間にも摩擦は生じる。また、注油することで錆を防止するという役割もあるため、注油は必要だという結論に至る。
チェンシコの頻度は?
チェンシコの頻度として、走行500kmごとや1,000kmごと、又は1ヶ月ごとぐらいが目安だと一般的には言われている。(オフロード走行やサーキット走行はまた別)
ただ、僕の見解としては、雨天走行のあとや、見た目で錆びたり汚れがひどい場合なんかには、その都度チェンシコしてもいいと思っている。綺麗にしておいてダメなことは無いと思う。が、そこまで頻繁にする必要もないとは思う。
見た感じで「あ〜、汚れてきたな〜」と思ったらするぐらいでいいのかもしれない。
ライダーによって乗り方や、走る道、天気状況なども違う中バイクを走らせるので、あくまでも1,000kmや1ヶ月は目安ということ。要は、定期的にこまめにチェックはしておいた方が良いということだ。
見た感じで分からなければ、500kmや1000km、1ヶ月などわかりやすい指標を自分で設定してチェンシコすればいいので頻度には個人差や個体差がある。
チェンシコに必要な最低限の道具をそろえる
チェンシコを本格的にしようとすると、意外にも揃える物は必要になってくるし、その分費用もかかってしまう。僕のような庶民ライダーには「費用」はとても大事だ。
では、どれくらいの物が必要になるのだろうか。本格的チェンシコだと下記が必要になる。
- ナイロンブラシ
- 真鍮ブラシ
- チェーンクリーナー
- チェーンルブ
- ウエスやペーパー類
- ビニール手袋など
- 新聞紙や段ボール
- バイクスタンド
ざっくりとこんな感じ。中でもバイクスタンドがちょっと高い。他にも色々とメンテナンスする人にとっては今後必要になると思うので購入しておいてもいいとは思う。
ナイロンブラシは使わなくなった歯ブラシでも代用できる。チェンシコ専用の三方向からシコシコできるブラシも売っているが、ナイロンブラシや歯ブラシで十分だ。
真鍮ブラシは、チェーンに錆がある時に擦って錆を落とすのに使う。
チェーンクリーナーに関しては、汚れが酷い場合には使ってもいいと思うが、ブラシとウエスだけである程度汚れは落ちる。
チェーンルブとは、いわゆるチェーンオイルのこと。シールチェーンのオイルシールを傷めることがあるので、シールチェーン専用のチェーンルブを必ず使わないといけない。(僕も最初はチェーンルブ・・・るぶってなんやねん?と思っていた)
新聞紙や段ボールは地面を汚さないようにするために使うが、これも汚れが酷い場合だけだと思う。
では、今回僕が揃えたものは下記だ。できるだけ簡単に費用も抑えた。
- ナイロンブラシ
- チェーンルブ
- ウエス
- 手袋
この4つだけ。これだけで「チェンシコ」は簡単にできる。
チェーンルブには色々あるが、ワコーズのものを僕は使っている。容量は少ないが、実はチェーンルブは1回で少量しか使わないので長持ちする。
⇩このブラシセットだと、ワイヤー、銅ワイヤー、ナイロンと3種類セットで用途によって使い分けできるから便利。チェンシコ以外にも錆を落としたりするのにも役立つ。
⇩軍手でもなんでもいいが、ニトリルやビニールだとオイル交換、その他のメンテでも使えるから便利。
⇩色んなメンテに使える使い捨てのウエスなんかもあると便利。キッチンペーパーでも代用可。
チェンシコする
さて、それでは実際にチェンシコしてみる。余談だが、「チェンシコる」と書きたかったが、いかにもな感じが出てしまうので「チェンシコする」と記述した。
今回、僕の場合はバイクスタンドを使わずにチェンシコした。少し手間がかかるが、問題はないので費用を抑えたい人にはオススメ。チェーンカバーは簡単に外せるなら外して作業したほうが楽だろう。僕のCB400SFはリアフェンダーと一体になっているので外すのは諦めた。
まず、チェーンの外側からナイロンブラシでシコシコこすっていく。この時、汚れが地面に落ちないようにウエスやペーパーなどを当てながら作業する。ナイロンブラシでこすったところをウエスで拭く。これを何度か繰り返し、キレイになったらチェーンを回してまたシコシコ、そして1周したら完了。この時、チェーンに錆がある場合は真鍮ブラシや銅ブラシで軽くこすって錆を落とす。
次に、チェーンの内側も同様にシコシコして拭いていく。
これだけで汚れは落ちてキレイになるので、クリーナーを使わなくても十分だと感じる。
もしチェーンクリーナーを使う場合は、専用のクリーナーを必ず使うこと。パーツクリーナーや他のクリーナーでいいじゃん!と思うかもしれないが、必要な油分まで落としてしまったり、オイルシール破損の原因になったりするので絶対に使ってはダメだ。
ひと通り汚れが落ちたら、チェーンルブを吹き付けていく。吹き付ける、と言ってもほんの少量だけで充分だ。シール部分に少しずつ、そしてロールにもほんの少しずつチェーンの内側から注油していく。内側に注油すると、回転の遠心力で外側にも油分が浸透していくという具合だ。
チェーンルブを注油したら、ウエスで余分な油分を拭き取ってあげる。チェーンルブをバーっと勢いよくたっぷり吹いてビチャビチャにしてしまうと、走行時に油分が飛び散り、バイクは汚れるしブレーキのディスクやタイヤなどに付着すると危険なので必ず少量を吹いて、余分な油分は拭き取って欲しい。
そしてこれを1周分作業したらおわり。と言いたいところだが、5分〜10分ほど放置し、油分がチェーン全体にまわった頃合いにもう一度ウエスで拭いてあげるとより完璧に仕上がる。作業後に内側の油分を外側に馴染ませるために、軽くバイクを走らせると良い。
・エンジンをかけてタイヤを回して作業するのは絶対に禁止。指がなくなるよ。
・パーツクリーナーは絶対に使わないこと。オイルシールの破損につながる。
・汚れを落とすのにワイヤーブラシや真鍮ブラシは使わないこと。チェーンを傷めて寿命が縮まる。
チェンシコまとめ〜メンテをすることも楽しむ
今回紹介したチェンシコは僕なりの簡単なやり方だ。実際はバイクスタンドがあった方がやりやすいし、作業も捗る。でも、できるだけお金をかけず、手間をかけずにやるなら僕のようにしてみるのもいいかもしれない。
チェンシコひとつとっても、整備士さんやライダーさんによってやり方や考え方は様々だと思う。ぜひ自分なりのチェンシコを見つけて欲しい。
バイクはお金と手間がかかるもの。それを専門家に任せるか自分でやるか人それぞれだけど、自分でできることはやってみると意外と楽しい。それにバイクへの愛着が益々強くなるのを感じる。
下世話な話だが、やはりしっかりと愛着を持って乗っていると売るときにも高く売れる。オークションの出品車両を見ていてもそれはしっかり落札価格に反映されているし、納車されたバイクの状態を見ると前オーナーがどれだけ愛着を持って乗っていたか、なんてことが垣間見れたりする。
オジサンになった今、「メンテも自分でする」ということも含めて「バイクに乗る」ことを楽しんでいる。
では、良いチェンシコライフを!