明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願います。今年は元旦から、悲しい出来事がありました。能登半島沖を震源とした地震では、多くの建物が倒壊し、今も尚、救出活動が続けられています。被災した方々の安否とご健康を心よりお祈りします。
そして1月2日は、羽田空港にて海上保安庁の飛行機とJALの旅客機の衝突し、機体が炎上する事故がありました。JALの乗員乗客は無事脱出できたようですが、能登地震の救援物資を積んだ海保の乗員4名は亡くなったそうです。ご冥福をお祈りいたします。
そんな不穏な幕開けの2024年ですが、今年もこのメディアを通じて、皆様にバイクに関する情報や思いをお届けできたらと思っています。
さて年末年始、ライダーの皆様はどんなバイクライフを過ごされたでしょうか。筆者の年末は、ドゥカティ848のオイル交換をして、走り納めをしました。いつも使うのはShellのアドバンスウルトラなのですが、今回初めて広島高潤のボローニャ15W-50というオイルを使ってみました。
皆さんご存知の通り、4ストロークのバイクに乗っている以上オイル交換は必要不可欠ですよね。そしてオイル交換は自分でする派、バイク屋さんにやってもらう派に分かれます。しかしながらオイル交換はしていても、エンジンオイルについて、案外知らないことも多いのではないでしょうか。
ということで、今回は「エンジンオイルの役割や種類」について、深く掘り下げていこうと思います。
エンジンオイルとは?
そもそもエンジンオイルとは何なのでしょうか。一言で言うと、車やバイクに使用されている潤滑油のことです。エンジンオイルはエンジンを動かす上で重要な役割を果たしており、運転時にはオイルパンから各パーツへと汲み上げられて循環しています。エンジンの性能を最大限に引き出し、長期的に良い状態を維持するにはエンジンオイルを定期的に交換する必要があります。因みに、エンジンオイルが必要なのは4ストロークバイクのみで、2ストロークバイクにはエンジンオイルの概念がありません。
エンジンオイルの役割
続きましてバイクのエンジンオイルの役割について触れていきたいと思います。エンジンオイルの役割は大きく分けて、下記の5つがあります。
・潤滑作用
エンジン内部では様々な部品が稼働し、金属同士の接触によって金属間で摩擦抵抗が生まれてしまいます。そこで有益なのがエンジンオイル。オイルで油膜を形成することで、摩擦抵抗が減り、スムーズな動作ができるようになります。当然、摩擦による摩耗も防ぐことになります。
・密封作用
そもそもエンジンとは、ピストンの上昇により圧縮された混合気を燃焼させることにより、動力を生み出しています。実はピストンとシリンダーの間にはわずかな隙間があります。そこでピストンリングをつけることにより、より隙間を減らし、圧縮を高めるようになっています。ただそれでもピストンリングとの間に隙間ができてしまい、ガス漏れが起こります。そこでエンジンオイルがその隙間を埋めることで、圧縮を高め、無駄なくエレルギーが生み出せるのです。
・冷却作用
エンジンは燃焼運動を続けることで、高温になります。そこでエンジンオイルが熱を吸収し、オイルパンやオイルタンクに戻ることで、熱を分散し放熱することができます。つまりエンジオンオイルは、焼き付けを防ぐ役割も担っています。
・洗浄作用
エンジンは燃焼や回転運動の摩擦によって様々なスラッジ(汚れ)が発生します。そこでエンジンオイルが汚れを吸着することで、特定の場所にスラッジが溜まるのを防いでいます。但し汚れを取り込む量には限界があるので、一定期間使用したオイルは交換する必要があるということです。
・防錆(ぼうせい)作用
エンジン内部が熱を持つと、当然外との温度差が生まれます。それにより冷めた時に内部に結露が発生し、水分が出てしまいます。つまりエンジンオイルは、水分による錆を防ぐのにも一役かっています。
エンジンオイルにこれだけの役割があることを、ご存知でしたでしょうか?エンジンオイルって、バイクにとってすごく重要であることがわかります。
オイルの種類
次にオイルの種類について触れていきます。エンジンオイルとは通常、ベースオイルに添加剤を加えたモノを言います。このベースオイルには大きく分けて3つの種類があります。
A.鉱物油
鉱物油とは、原油を蒸留・濾過して作られた最もベーシックなオイルです。製造過程も比較的シンプルな為、値段が安いのがメリットです。但し、ある程度不純物が入っているので、比較的劣化が早く、マメなオイル交換が必要になってきます。
B. 化学合成油
化学合成油とは、オイルの製造過程で限りなく不純物を取り除いた高性能なベースオイルのことを言います。潤滑性も高く劣化もしにくいので、エンジン性能にこだわる人、バイクでサーキットを走る人などに使用される事が多いです。但し、他のオイルより値段が高くなっています。
C. 部分合成油
部分合成油とは、鉱物油と化学合成油を混ぜ合わせたベースオイルの事で、鉱物油の弱点を化学合成油で補うように作られたものです。性能もよく、値段も化学合成油よりはリーズナブルなので、使いやすいオイルとなっています。
粘土表記の意味と選び方
・粘土表記とは?
エンジンオイルに「10W-40」といった表記が書いてあるのは見たことはありますか?「10W-40」とはSAEによって分類された粘土を表示を表しています。SAEとは米国自動車協会(Society of Automotive Engineers, Inc.)の事。WはWinterの頭文字に由来しており、Wの前の数字が低音粘土、Wの後の数字が高温粘土を表しています。この数字は、小さい(低粘土)ほどオイルがサラサラで柔らかく、大きい(高粘土)ほどオイルの粘りが強くて硬いことを表しています。
10W-40は具体的にどういうオイルかと言うと、10Wは低温時の粘土を表しているのですが、始動性などの目安にもなります。そして40は高温時の粘土を表しており、暑い時の油膜の基準をなります。この粘土とはそれぞれ一長一短あり、サラサラの低粘土は始動性や燃費が良い反面、エンジンの剛性度は高粘土より弱くなります。対して粘りのある高粘土は、高温時でもしっかりエンジンを保護する上、エンジンノイズも小さくなります。但し、燃費に関しては低粘土より劣ってしまいます。
・粘土の選び方
以前乗っていたトライアンフのスラクストンRのオイルを例に取って、オイル粘土の選び方を見ていこうと思います。メーカー指定オイルはカストロール POWER1 ULTIMATE 10W-40 (4T; 4ストローク用)でした。他のバイクにも指定オイルや指定粘土がありますので、ネットで調べるかバイク屋さんに聞いてみて下さい。
A. 冬場など外気温が低いとき
10W-40→5W-40 粘土が下がるほど、低音での流動性が高くなるので、始動直後からよく動いてくれます。
B. サーキットなど常用回転域が高い場合
10W-40→10W-50 サーキット走行などでは、エンジンが高回転に回り熱を持ちます。高粘土域を40から50に上げた方が、エンジンに負荷がかかりにくくなります。
C. 油温が上がりやすい環境や空冷エンジンの場合
10W-40→10W-50 夏場や渋滞を走る時、どうしてもオイルの温度(油温)が上がりやすくなります。また空冷エンジン車は走行風でエンジンを冷やす為、水冷に比べて油温が高くなる傾向があります。そういった場合、オイルの高粘土域を40から50に上げた方が、エンジン負荷を抑えられます。
オイル交換の時期
バイクのオイル交換は一般的に3000km毎、フィルター交換は6000km毎と言われています。しかしながらオイルは時間が経つほど、そして空気に触れるほど劣化するので、3000km走らなくとも6ヶ月に一回は交換したいですね。オイルの種類によっては6000キロに1回交換のモノもありますが、私は大体3000~4000km毎に交換しています。
モチュール300Vのような高性能レーシングオイルを使ってサーキットを走る場合は、1000~2000キロ毎に交換した方が良いでしょう。またギアがいつもより入りにくくなった時や、油温が上がるのがいつもより早いと感じた時が、オイル交換の目安となります。
オイル潤滑剤について
エンジンオイル添加剤を使用したことはあるでしょうか?オイル添加剤を使えば、エンジンの性能がUPします。さらに良いのが、エンジンの動きが良くなり燃費がアップします。またギアが入りにくい・N(ニュートラル)が出にくいと感じた時、オイル添加剤を使用するのをオススメします。
ここでは私が日頃から愛用している、オメガ(Omega)オイルさんの909オイル強化添加剤を紹介します。本当にギアがスコンスコン、気持ちよく入ります。この商品は非常に粘着性がある水飴のような液体で、エンジンオイルキャップを開けて注ぐだけです。但し粘性が強いため、注射器やジョウゴを使って注入した方が良いです。エンジンオイル3L以上要する大型バイクなら、ボトル1本(300ml)で2回使用することができます。
まとめ
今回は、エンジンオイルにまつわる事由を紹介させていただきました。DIYでできる一番簡単なメンテナンスがオイル交換ですが、エンジンオイルは4ストロークのバイクには本当に欠かせない血液のような存在です。
エンジンオイルの役割や種類をよく知ることによって、バイクのエンジンに負荷をかけすぎないように、バイクを長く楽しむことができると思います。汚れたオイルから綺麗なオイルに交換してやると、愛車のフィーリングが格段に良くなり、なんだかバイクが喜んでいるような気がしてきます。
いつもオイル交換はバイク屋さん任せだけれど、ちょっとやってみようかなと思ったライダーさんは、是非挑戦してみて下さい。さらに自分のバイクに愛着が湧いてくると思います。ここまでご購読ありがとうございました。