BMW旧車カフェレーサーから学ぶ「バイクの電気の仕組み」

バイク乗りの皆様、愛車のメンテナンスはどうされていますか?ディーラーもしくはバイク屋さんに任せている方もいれば、自分で全部やるよという方もいるかと思います。筆者はエンジンオイル、プラグ交換、マフラー(但しスリップオンのみ)交換くらいは自分でやるのですが、少し複雑な作業があるとバイク屋さんにお願いします。中でも、筆者は「電気系統」が苦手です。複雑な配線をとなるともうお手上げで、バイク屋さんに任せてしまいます。

今年2月に【愛車紹介シリーズ】と題して第1章、第2章と書かせて頂きました。第2章ではBMW旧車カフェレーサーにまつわる数々のトラブルをお伝えしました。ツーリング前にバッテリーをしっかり充電しても、途中で電気が放電して走れなくなってしまうトラブル。充電器を持参してバイクに跨り、電気が空っぽになったら充電させてもらうという、ガゾリン車にはあるまじき出川さん式ツーリング(笑)を強いられていました。詳しい内容は過去の投稿をご確認ください。

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そんな状態ではとても安心して走れないと考え、バイク屋さんにも教えてもらいながら、「バイクの電気の仕組み」を学ぶことにしました。ということで、今回は「バイクの電気」について綴っていきたいと思います。

目次

バイクにおける電気の流れ

バイクのヘッドライトをつけるには電気が必要です。その電気はバッテリーからきます。バッテリーは電気を溜める役割をするもので、電気を作り出すことはできません。それでは、バイクがどうやって電気を生み出しているか、簡単に解説していきたいと思います。 

電気で光るBMWのヘッドライト

バイクはエンジンをかけると、クランクシャフトが回転します。そしてエンジン部分が回転すると、ジェネレーターという機構を利用して交流の電気が生み出されます。この発生した電気はレギュレーターという機構へ送られ、不安定な交流の電気から直流の電気へと変換し、一定の電圧に制御します。制御された電気はバッテリーへと送られ、そして蓄電されます。その電気を使ってヘッドライトやウインカーが光ります。これがバイクにおける大まかな電気の流れになります。

発電の仕組み

次に発電の仕組みについて触れていきたいと思います。発電方法は大きく分けて二つ。古いバイクや一部の輸入車が採用しているダイナモ方式と、現在ではほとんどのバイクに採用されているオルタネーター方式があります。ここではオルタネーター方式について、少し深掘りしていきます。

電磁誘導という言葉をご存知でしょうか?小学校の理科の時間に習ったような気がしますよね。動線を渦巻状に巻いた「コイル」の先に電球をセットし、棒磁石をコイルの輪の中に出し入れすることによって電気が発生します。これを電磁誘導と呼びます。そして発生した電気のことを誘導電流と言います。この電磁誘導の原理を利用して作られたのがオルタネーターで、無数に巻かれたステーターコイルの外側を、磁石が仕込まれたフライホイールが回転し電気を生み出します。 

オルタネーターのコイル

直流と交流

先ほど少し説明しましたが、電気には直流と交流の2種類があります。

❶直流:プラスとマイナスの極性が決まっており、流れる電流の方向が一定。乾電池やバッテリーは直流電気を出しています。

❷交流:それに対して交流は、プラス・マイナスの極性が決まっておらず、一定の周期で電圧の大きさや電流の向きが変化します。そしてこの周期が1秒間に何回繰り返すかという事を周波数と言います。バイクで言えば、オルタネーターで発生する電気が交流です。身近なところでは家庭用のコンセントも交流で、ブラグをどちら向きに指しても使えます。電化製品は、交流の電気をACアダプターで直流に整流し、変圧して使用しています。バイクの場合も、蓄電ができ、電気機器などの端末を正常に作動させる為にも、発電された交流電気を直流へ変換する必要があります。 

直流と交流の違い

レギュレーターの役割

オルタネーターで発電する電気は交流なので、電圧が不安定です。それらをバッテリーに蓄電するために、以下の2つの装置があります。

A. レクチファイヤ:交流を直流に整流する装置

B. レギュレーター:電圧を制御する装置

最近のほとんどのバイクは、この2つの機能を1つの部品で兼ね備えたものが主流となっており、レギュレーターレクチファイヤーと言うのですが、総称して「レギュレーター」と言います。 

<ここで電気の豆知識>
・バッテリーが新しいのにすぐバッテリーがあがってしまう場合は、真っ先にレギュレーターを疑ってみましょう。オルタネーターよりもレギュレーターの方が、一般的には壊れやすいです。

・バッテリーが正常に働いているかを判断するには、バッテリーターミナルにテスターをあて、エンジンを噴かし3000回転あたりで13~14Vくらいになれば正常です。もしテスターがない場合は、エンジンの回転を上げて吹かしている時に、アイドリング時よりヘッドライトがふわっと明るくなれば、充電が正常にできていると判断できます。

鉛バッテリーとリチウムイオンバッテリーの仕組と特徴

ほとんどのバイクは鉛バッテリーが採用されていますが、近年では軽くて安全なリチウムイオンバッテリーが台頭してきております。それでは2つのバッテリーの仕組や特徴を見ていきましょう。

①鉛バッテリー

12Vの鉛バッテリーの場合、内部が6つの部屋で構成されています。その1つずつの部屋のことをセルと言います。そしてそのセルの中には陽極版と陰極版、つまりプラスとマイナスの電気を発生させる板が触れ合わないように数枚交互にセットされています。そこへ希硫酸という液体を入れることで、それぞれが化学反応を起こし電気が発生するという仕組みになっています。1つのセルで発生する電気は、陽極版の大きさに関わらず2Vとなっており、それが6つ集まることで12Vを生み出しています。 

鉛バッテリーの仕組み

鉛バッテリーは大きく分けて2つの種類が存在します。バッテリー液を定期的に補充する開放タイプと、液の補充を必要としないMFタイプがあります。最近の車やバイクは後者のMFタイプ、つまりメンテナンスフリータイプを使用することが多いですね。

鉛バッテリーの寿命は一般的に2~3年と言われていますが、これは使用状況によって大きく変わります。バッテリーはどんなに新しくても使わないと、自然放電によって電圧が下がってしまい、寿命も短くなってしまいます。特に寒さに非常に弱いため、冬場に乗らずに放置するのは、バッテリーとって大きなダメージとなります。冬から春になって久しぶりにバイクに乗ろうといった時に、エンジンがかからないというのはよくある話です。冬場や長時間のらない場合はターミナルを外し、乗る前にしっかりと充電しましょう。

②リチウムイオンバッテリー

スマホ、パソコンはもちろん、バイクにまつわるものならばインカムやカメラまで、実はリチウムイオンバッテリーが動力源です。また車にはハイブリットカーから電気自動車まで、リチウムイオンバッテリーが沢山使われています。しかし、バイクにはなぜ昔ながらの鉛バッテリーがまだ主流なのでしょうか。初期のリチウムイオンバッテリーは、発火・爆発・充電不良を起こしやすいといった問題が確かにあったため、バイク用リチウムイオンバッテリーに懐疑的なイメージを持つライダーさんが多いのかもしれません。

しかしリチウムイオンバッテリーにも。実は色々な種類があります。私の購入したBMWに装着されていた、SHORAIバッテリーは、リチウムフェライトを使用しており、この素材は発火や爆発の原因となる可燃性ガスを発生しません。徐々にではありますが、SHORAIバッテリーを使うライダーが増えているようです。

SHORAIのリチウムイオンバッテリーは、内部を4つ部屋(セル)で構成されています。1つのセルで発生する電気は3.3Vとなっており、それが4つで集まることで13.3Vを生み出しています。素材は鉛ではなく鉄でできており、希硫酸の代わりにリン酸を使います。 

SHORAIのリチウムイオンバッテリーと充電器

リチウムイオンバッテリーの利点はいくつかあります。鉛バッテリーに比べて、圧倒的に軽く小さく作れることです。それに加えて急速充電・大量放電も得意で、リン酸を使っているので安全性も高いのです。但し、小さく作っている分、容量自体は小さいので、防犯アラームなどエンジンを回してない時の電力消費や、暗電流が多いバイクは苦手です。加えて鉛バッテリーよりも価格が高いこともネックではありますが、今後バイクにも鉛に変わってリチウムイオンバッテリーが主流になるのではと、私は思っています。

BMW旧車カフェの問題点と解決策

さて一通りバイクの電気系統を勉強したところで、BMW旧車カフェの「バッテリーが空になってしまう」問題点について検証していきます。古いOHVのBMWは、オルタネーターによる発電能力が低いバイクとして知られています。加えてレギュレーターがうまく機能していなかったことから、バッテリーの充電が空になってしまい、バイクが止まってしまいます。

①強化オルタネーターの導入

そこでまず発電能力を上げるために、BMW・OHVボクサー専用の強化オルタネーターを導入しました。最大出力450Wでアイドリングからしっかり発電し、充電不足の不安やストレスがなくなりますとのこと(by BMWメンテナンス)。  

強化オルタネーター

②レギュレーターの交換

純正のダイオードボード(BMWのレクチファイヤー)を外し、ドゥカティのレギュレーターレクチファイヤーを入れました。実はBMWメンテナンスのレギュレーターを試したのですが、リチウムイオンバッテリーの電圧に対応していなかった為、ドゥカティのモノに変更しました。

レギュレーター

③バッテリーのグレードアップ

バッテリーに関しては、バイク屋さんに鉛バッテリーを勧められたのですが、ワンオフのバッテリーボックスが小さすぎるので鉛バッテリーが挿入できません。そこでSHORAIバッテリーのもう少し容量が大きいモデルに変えることにしました。購入したのは、LFX2A6-BS12で重量は1.38kgです。

まとめ:BMW旧車カフェは走れるようになったか?

今まで苦手だといって敬遠してきた「電気系統」でしたが、こうやって少し勉強すると案外食わず嫌いだったのだなぁと思うようになりました。とは言っても自分で全て整備するのは、かなりハードルが高そうですが・・・、1つずつやれることをトライしていきます。

そして肝心のBMWは、前章の①~③を変更した結果、充電が無くなることなく走れるようになりました。他の部分で少し問題はありますが、ようやくスタート地点に立てた気がします。これからは、最高にカッコいいBMW旧車カフェレーサーで、阿蘇を中心に走り込んでいきたいと思っています。ここまでご購読ありがとうございました。 

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この記事を書いた人

Yone Log for Motorcycleの運営者。コロナ禍を機に大型二輪免許を取り、バイクに乗り始める。商社マンからフリーランスに転身し、関西からツーリング天国の熊本へ移住。カフェレーサー&スーパースポーツ好きで、サーキット初心者。愛車はドゥカティ848EVOコルセSEとBMW・R100RTカフェ仕様(1981年式)。

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