ユニークなバイク達〜HONDA XRE190〜

 皆さん、こんにちは。皆さんのバイクは、ホンダ製? ヤマハ製? スズキ製? カワサキ製? それとも輸入車?日本はバイクメーカー4社がある世界の中でも有数のバイク大国ですね。
でも世界には日本に無いモデルも沢山あります。バイクも国ごとにコンセプト、デザイン、ホイールサイズ、装備などさまざまです。

昔、スクーターのホイールサイズは、その国のピザのサイズと同じだ、と聞いたことがあります。真偽は定かではありませんが、日本は10~12インチ、アジアは14インチ、欧州は16インチなんて考えていたらまんざらでもないような気がしてきました、笑。

さて第1回目に紹介するのは、ホンダのXRE190です。聞いたことないなあ?そう、これは地球の裏側ブラジルで生産、販売されているモデルです。また私の愛車でもあります、笑。このモデルの最大の特徴はバイオエタノール、つまりアルコールでも走れることなんです。

ホンダ XRE190 ホンダブラジルのHP https://www.honda.com.br/
目次

ブラジルの燃料事情

サンパウロのガソリンスタンド 下から2番目がエタノール(NHKのHPより)

ブラジルは歴史的に国策でバイオエタノール燃料を普及させて来ました。ブラジルのバイオエタノールはサトウキビから作ります。ガソリンスタンドに行くと、バイオエタノールを20%含有したガソリン(E20と言います)、E85、E100などさまざま種類の燃料が販売されています。
価格もブラジルでは競争力がありそうですが、ガソリンもエタノールも常に変動しますので、お客さんはその都度選んで給油しているようです。
そのバイオエタノールが近年注目されて来ています。地球温暖化の対策として、日本も2050年に向けてカーボンニュートラルを目指していますが、その解決策のひとつがバイオエタノールの利用です。

サトウキビはCO2を吸収しながら成長しますので、再生可能エネルギーの1つとしてカーボンニュートラル(正確にはカーボンオフセット)と位置づけられています。実際には製造時や輸送時にC02を排出しますので、現在アメリカやブラジルから輸入しているバイオエタノールの温室効果ガス削減量はガソリンに較べて58~68%のようです。

エタノールはガソリンに比べ温室効果ガスの発生が少ない(資源エネルギー資料より作成)

日本の燃料事情

実は日本のガソリンにもバイオエタノールは含まれています。一般的には3%まで許容されています。でも実力は平均すると1.7%くらいのようです。また法律では、10%まで含有したガソリンも販売することができます。但し、それに対応した車でないと走行できません。

皆さん、自家用車の給油口を覗いてみてください。写真のような紫部分の表示があれば給油可能です。でもそんなガソリン売っていませんよね。また、昨年インドでG20が開催されたときに、インドのモディ首相がGBA(グローバル・バイオフューエル・アライアンス)を立ち上げました。インドに加えて、バイオエタノール先進国のブラジル、アメリカをはじめ世界19か国が参加しようです。残念ながら日本の出席はなかったようです。
どうやら日本はまだまだバイオエタノール後進国のようなんです。でも逆に考えると今後の伸びしろが大きいということですから期待大ですね、笑。

ガソリンの給油口の蓋の裏に、バイオ混合ガソリン対応車と貼ってある

XRE190の概要

モデルのコンセプトは、「あなたが生きる冒険が認められていること」だそうです。カテゴリーで言うとアドベンチャーモデルになります。

フロントマスク~フェンダー、リアのアップマフラーがアドベンチャーモデルらしくていいですね。また、深い緑のボディカラーもブラジル、アマゾンを彷彿させます。仮面ライダーアマゾン(古いか?)が似合いそうですね、笑。

バイオエタノールの可能性

諸元に目をやると燃料のところに「ガソリンおよび/またはエタノール」と書いてあります。これは、フレックスフューエルモーターサイクルであることを示しています。つまりガソリン100%~エタノール100%まで、どのような混合比でも走行可能ということです。
また気が付いたのが出力とトルクのところです。いずれもエタノールの方がガソリンよりも僅かですが高い数字となっています。日本でもガソリンスタンドに行くとレギュラーガソリンとハイオクガソリンが販売されています。
ハイオクガソリンはレギュラーガソリンに比べてオクタン価が高く、エンジンの圧縮比を上げたりして出力向上させることができます。
しかしエタノールは更にハイオクよりもオクタン価が高いんですね。現在はガソリンの脇役のバイオエタノールですが、将来はエタノールが主役になる日が来るかもしれません。

燃料は、ガソリンおよび/またはエタノールとなっている

そんなバイオエタノールにも弱点があります。一つは燃費がガソリンに比べて30%くらい悪化します。よって満タンでの航続距離が低下するので給油する頻度が増えます。

もう一つが低温時の始動性です。ガソリンの引火点はマイナス40℃くらいですが、エタノールの引火点は13℃です。よって始動性が悪くなりそうな時はガソリンを多めに給油する必要があります。
そのためにXRE190にはメーター内にエタノールインジケーターがついています。エタノール濃度が80%以上で気温が15℃以下の時にはウォーニングが点滅しガソリンを追加するよう指示されています。ブラジルのお客さんはこんな工夫をしながらエタノールを使っているんですね。

メーター内にエタノールインジケーターが装備される(OM オーナーズマニュアルより引用)
エタノール濃度が80%以上で気温が15℃以下の時にはウォーニングが点滅する(OMより引用) 
ガソリンの追加が支持される(OMより引用)

フレックスフューエルを可能にした技術とは

ホンダテクニカルレビューというサイトがあります。これはホンダの技術論文が掲載されているサイトですが一般の方も閲覧できます。
2009年10月発行の中に「フレキシブル・フューエルモーターサイクルの開発」という論文があります。その要旨は以下のようです。

ブラジルの市場ニーズに対応したガソリンとエタノール燃料と、また両者の任意の混合でも運転できる機能を有するフレキシブル・フューエル二輪車(FFM)を開発した。
四輪のフレキシブル・フューエル車では、低温時のエンジン始動性を確保するため、始動用ガソリンを供給するガソリンサブタンクと噴射装置を追加することが一般的だが、小型二輪車では、それらの装備は困難であり大きな課題であった。
二輪用システムでは、燃料のエタノール濃度範囲を判定する制御ロジックとそれに応じて低温始動が困難な場合にガソリンの供給を促すインジケーターを設けることでサブタンクを廃止したシンプルなシステムとした。また、エタノール燃料の特性に対応した燃料計部品の開発を行った。

とあります。技術的に興味がある方はぜひこちらをごらんください。

ホンダテクニカルレビューのHPより

本田技術研究所 論文サイト 論文のダウンロード、電子ブックの閲覧 (hondarandd.jp)

現在の私のバイクの走行距離はやっと1000kmを超えました。高速道路も使ってツーリングにも行きましたが、日本の環境にも十分適合できそうです。せっかくバイオエタノールでも走れるのだから、いつの日かバイオエタノールで日本一周できれば少しは温室効果ガス削減に貢献できますね。そんな日を楽しみにしています。

著者のXRE190

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この記事を書いた人

1960年生、山口県宇部市出身。元メーカーの開発エンジニア。 現在は、カーボンニュートラル燃料の普及を研究中。

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