新しいバイクを手に入れて初めてのツーリング。
早く走り出したいその気持ち。ワクワクが止まりませんよね。
かつての私も同じでした。
そんなビギナーからバイクツーリングで最も大切なことは何かと問われると、私ならこう即答します。
「安全」だと。
ライダーが一番に心がけるべきなのは、「安全」です。
今回は特にツーリング初心者に送る「安全にバイクを運転するためのライディングテクニック」をお伝えします。また長時間バイクに乗っても疲れにくい方法もご紹介していますので、楽しみに読み進めて頂けると嬉しいです。
バイクに長時間乗ることでのデメリット
ツーリングではもちろんバイクに長時間跨って運転することになります。
そこでまず、楽しいことも沢山あるのですが、あえてバイクを長時間運転することのデメリットを私自身の経験を含めて5つ挙げてみました。
- 気疲れから疲労感や眠気に襲われやすくなる
- 集中力が低下して道路標識や指示を見落とす心配
- 首や腰、背中、肩への大きな負担
- 長時間同じ姿勢を取り続けることで起こる体調の変化
- 皮膚や目などの、日焼けや乾燥による炎症
ではこれらのデメリットについて、ひとつずつ見ていくことにしましょう。
気疲れから疲労感や眠気に襲われやすくなる
例えば雨天時では、路面の湿潤具合や車線等を示すペンキ、工事用の鉄板などでタイヤを滑らせると転倒します。さらに落石や他車からの落とし物といった障害物もあります。
バイクは自動車よりも路面の変化や状況に影響を受けやすい乗り物。どんな道路状況でもあらゆる危険に対応するため、運転中は集中力や注意力が必要なのです。
しかし運転時間が長くなるにつれて、どうしても集中力や注意力が落ちてしまいます。高速道路や高規格自動車道路を走行していると防音壁など単調で退屈な景色が連続するので、さらに疲労感や眠気に襲われやすくなります。
集中力が低下して道路標識や指示を見落とす心配
集中力の低下は道路に掲げられている道路標識、通行止めや迂回などの指示を見落とす心配を生じます。道路標識の無視がお巡りさんに見つかれば、交通違反による減点や罰金が課せられます。せっかくのツーリングなのに悲しいですよね。
また集中力の低下は車線変更や車線減少など重要な情報を見落としたり、道案内で不要な遠回りを強いられたりする事態につながります。
首や腰、背中、肩への大きな負担
ツーリング中に同じ姿勢をとり続けると、誰でも関節部分にコリや張りといった痛みを感じるようになります。特に冬場など寒風を浴びる状況ではさらに血流が悪くなり、そういった傾向が強く出ます。初心者の運転は緊張も相まって、なおさら姿勢に力みが加わってしまいがちです。
しかしバイクの運転中に身体を大きく動かすことは難しく、信号待ちで背伸びする位が精いっぱいでしょう。
長時間同じ姿勢を取り続けることで起こる体調の変化
そして長時間に渡り同じ姿勢をとり続けることで、全身の血液やリンパ液の循環が悪くなります。特に下半身への血行不良やむくみの原因になります。
またバイクの構造上、水分摂取をこまめに行うことが難しいために冬場は乾燥の、炎天下では熱中症の心配もあります。
体調の変化は時を選ばず起こりうるので、途中で体調に変化が起こるとツーリング自体が台無しになることもあります。
皮膚や目などの、日焼けや乾燥による炎症
ヘルメットやライダースジャケットで覆われた部分以外は絶えず吹き付ける外気に晒されることで、紫外線による日焼けや皮膚の炎症が考えられます。
暑いから、より風を感じたいからとゴーグルを開けて走る場合は、目の乾燥や飛び込んでくる虫、ゴミによる炎症が心配です。
でも、安心してください!対策していますよ、ツーリングを楽しむ人たちは。
これまで上げた5つのデメリットの中で、初心者でもテクニックで対処可能なのが「首や腰、背中、肩への負担や疲労」です。
ここからは、そのテクニックを解説していきます。
バイクに長時間跨っても疲れにくいテクニックとは?
長い時間一定の体勢で運転し続けるコツは我慢を強いることではありません。簡単なテクニックで楽になるものです。
バイクでの安全運転の第一歩は、跨る時の姿勢といっても過言ではありません。その姿勢を身に付けることで、これからのライディングライフをより充実したものにできますよ。
ここでは今日から実践できる、姿勢を楽に保ちやすくするコツを紹介します。
ポイントはつま先!内股でボディを両脚で挟むだけ
バイクに跨る際はやや前傾姿勢となり、上半身は背筋を伸ばした姿勢で乗ります。その姿勢を大前提として、バイクのボディ(胴体)を内股で挟みこむのです。
内股って言っても、身体が硬いしかえって疲れそう…そう思われたかも知れません。
しかしここで説明するコツを実践することで驚くほど簡単にバイクの胴体を楽にホールドできるのです。
ポイントはつま先にあります。バイクにまたがる際に、両方のつま先をバイクのエンジン側に向けて内股の状態にするだけです。そうすると自然とバイクの胴体を両脚やふくらはぎが包み込んでいることに気付くでしょう。
これだけなのです。
実はバイクというのはそのようにデザインされているのです。
力を入れたまま両脚で挟み続けることではないので、両方の腿にも体幹部にも必要以上な筋力を使うことなく、不要な疲労感を軽減できます。
そして下半身が安定するのでバイクは安定して走行します。上半身に余計な力を入れる必要はありません。
両脚で挟むことで生まれるメリット
次に、内股でバイクをはさむ姿勢がもたらすメリットを解説します。
とにかく体勢が楽
身体に余計な力を入れる必要がないのでとにかく体勢が楽になります。グリップを意識して両脚に力を入れて挟みこむと、気が抜ける時にグリップも緩み、途端に走行が不安定になる危険があります。
カーブや曲がり角を通過する際に体重移動しやすい
下半身をしっかりと安定させることで、体重の傾きをバイクに伝わりやすくし、コントロールがしやすくなります。
レーサーレプリカのバイクでサーキットコースのカーブを攻めながら曲がるような極端な場合は除いて、通常であれば人馬ならぬ人車一体で車体を体重移動で傾けながら曲がります。バイクのハンドルはこの時も左右に自由に動きますが、実際にハンドル操作でカーブを曲がることはあまり無く、交差点や曲がり角で補助的に使用する程度です。
アクセルワークやクラッチ、細かいハンドル操作を邪魔しない
両脚と体幹部で上半身を支える姿勢が取れると、前傾姿勢であってもハンドルに体重を掛ける姿勢にはなりません。
余計な力や重みがハンドルやグリップの操作を邪魔しないので、バイクがより操作しやすくなります。また頭が上がりやすくなり、遠くを見て運転できるようになることから走行姿勢も安定します。横断歩道や障害物などの道路状況にも早く気付けることで、その対応に時間的な余裕が生まれます。
誰でも長時間の運転は疲れるし、疲れてくれば集中力や注意力を失い、ミスをする危険も高まります。しかしこうしたライディングテクニックを実践することで疲労感を軽減し、心身ともに楽に運転できるようになり、バイクがより安全で楽しい乗り物になります。
ぜひ実践してみてください。
バイクを安全に運転するために心がけたい3つのこと
次に初心者が安全で楽しい運転をしていくために心がけたいことを3つ挙げてみました。
- 疲れる前に休む できれば計画的に休憩をはさむ
- 休憩時には効果的なストレッチと水分補給を忘れずに
- 無理な計画を立てない 体調に変化があれば計画を変更する勇気をもつ
それでは順番に解説していきましょう。
疲れる前に休む できれば計画的に休憩をはさむ
運転する際の大前提は、疲れたら休むことです。バイクを降りたら、緊張が続いた心と身体を休めたいですよね。特にバイクの運転自体に慣れていないツーリング初心者は何かと疲労の度合いも高いものです。
だから「疲れる前に休む」位の心持ちが大切です。最初は30分〜1時間くらいの運転と休憩を繰り返す辺りから始めていくと良いでしょう。
休憩施設はゆったり座れるベンチやトイレ、自動販売機や売店がある高速道路のパーキングエリアや道の駅がベストです。今ではスマホのナビにも案内が出るし、道路標識にもこまめに案内が出ているので、発見はそんなに難しいものではありません。できれば計画に休憩に立ち寄る施設を組み込んでおくと良いでしょう。
有人施設の良いところは何か困ったことがあるときには人に頼れるし、地域の人と関わり交流することで自分の世界が広がります。さらに人と話すことで気持ちもほぐれてきますよ。
休憩時には効果的なストレッチ、水分補給を忘れずに
同じ姿勢を続ける足腰、頑丈なヘルメットを被った頭を支える首や背中のコリや張り、疲労感は血流の滞りで起こります。バイクはどうしてもその傾向が強い乗り物です。休憩時にバイクを降りたら、しっかりストレッチや屈伸、歩行などで身体を動かし、全身の血流を促していきましょう。
アクセルを握り続ける右腕、クラッチ操作を行う左腕も疲れやすい部位です。手首の曲げ伸ばしやマッサージなどで疲れた部位をしっかりケアするとより良いですね。
晩秋から早春にかけての寒冷時にはトイレが近くなるから、という理由で水分補給を控えている人もいると思います。夏であれば発汗や熱中症の心配もあるのでこまめな水分補給を呼びかけられますが、寒冷時でも喉や鼻腔、目などの粘膜が乾燥した外気に晒されてます。一口ずつとかで良いので、水分補給を忘れないようにしたいですね。
特に呼吸器系の乾燥は風邪やウィルス性疾患の元になります。お肌の乾燥防止には保湿クリーム、唇にはリップクリームを準備しておけば十分でしょう。
無理な計画を立てない 体調に変化があれば計画を変更する勇気をもつ
疲労や体調不良は事故の引き金となります。特に慣れないうちは自分の体力を過信せず、決して無理な計画を立てないことが大切です。
経験が浅い人は、せっかくだからバイクで遠くへ行きたい気持ちが先走ってしまい、自分の体力や疲労感を軽視して強引な計画を立てがちです。かつての私も同じだったので気持ちはよく解るのですが、自動車とは違って身体がマシンの外に出ているバイクでの接触や転倒は大ケガのもとです。
また人間ですので、ツーリングの途中でも体調の変化を起こすことがあります。その際は無理して計画通り進めるのではなく、途中で計画外でも休憩を挟んだり、場合によっては切り上げたりする判断が必要です。
ツーリングのチャンスはそうないかも知れません。しかし危険な目に遭ってしまうと全てが台無しになってしまいます。
勇気ある撤退は安全運転、楽しいバイクライフのためにも大切な判断です。
それでは、良いバイク旅を
バイクの旅は生涯心に残るような楽しくて美しい思い出になります。
しかしひとつのミスによって自分、家族や仲間、そしてお相手にとって一生残る心身の傷になりかねません。
そのミスを起こす引き金となりうるのが、安全に対する意識の欠如です。
安全を意識した運転ができれば、バイクはあなたの一生の相棒になってくれますよ。
ぜひ素敵なバイクライフを送るためにも、自分を大切にした安全運転をしていただきたいと思います。
それでは、良いバイク旅を。