山奥にポツンと一軒、蕎麦屋があると、なぜかもう美味しそうに感じる。加えて、「美味しい蕎麦屋は山奥にある」というのは僕だけが持つ固定概念ではないはずだ。
もしくは、山奥にポツンとあるだけで「美味しいはずだ。こんな所までわざわざ来て美味しくなかったら無駄足じゃないか!」という潜在意識が強制的に脳に信号を送り、もしかしたら普通の蕎麦でも「美味しい」と感じているだけかもしれない。
今回訪れたのは、そんな山奥の秘境と言っても過言ではないような場所にある蕎麦屋だ。実はバイクで走る快走路を求めて国道429号線の一区間を走るのが目的だったはずなのに、いつの間にか目的が蕎麦なのか国道429号線なのかわからなくなってしまった。
それでも、兵庫県の隠れツーリングコース(僕が思っているだけかもしれないが)としては、なかなかのポテンシャルを見せてくれたのでぜひ紹介していきたいと思う。
YouTubeも観てね!
酷道?国道429号線を求めて走る
Googleマップを眺めていると、なんとなく気になる道を見つけた。その近辺までは何度か走っているのに、そのルートは走ったことが無かったからだ。それが国道429号線である。
国道429号線は、岡山県倉敷市で国道2号から分岐し、京都府福知山市で国道9号に至る一般国道。総延長は249kmで、全線の多くは山間部にある。
今回走ったのは、兵庫県丹波市青垣町あたりから朝来市生野町までの一部区間のみ。
僕はいわゆる阪神地区に住んでいるので、国道176号線を北上して向かう。この176号線は地元を通っている慣れ親しんだ道だが、渋滞のイメージが強い。それでも三田市を過ぎる頃には交通量も少なくなり、快走路へと様変わりするから面白い。
この辺りまで来ると心なしか気温が少し下がった気がして、真夏に走っていても気持ちがいい。
そのまま国道176号線で丹波篠山市を抜け、福知山市方向を目指す。この辺りの176号線は「丹波の森街道」と名付けられている。ほぼ快走路が続き、改めて兵庫県も捨てたもんじゃないと思う。
こういう道は本当に走っていて最高だ。バイクだからこそ、そう感じるのだと思う。これが車なら単なる田舎道を延々と移動しているに過ぎないし、楽しくもない。
風と匂いを感じ、バイクという鉄の塊を操っている感覚がライダーにはたまらない。
そのまま176号線を北上したら、次は兵庫県道7号線を走り福知山市を通り抜け、国道427号線へと入っていく。
実は今回のツーリングで、もしかしたら一番の快走路と言っても良いぐらいの道が、この国道427号線だった。と言っても国道429号線へと続くほんの一部だけだが、この427号線はぜひオススメしたい。
真っ直ぐの快走路が続き、目に飛び込んでくる雄大な山々と青空のコントラストが最高な道だ。
ここに来てさらに少しだけ気温が下がった気がする。この道は見通しもよく真っ直ぐな快走路が続くので、ついスロットルを回しがちだが、ここはぜひゆっくりと走ることをオススメしたい。
バイクと共に素晴らしい景色を堪能しながら、のんびり楽しんで欲しいなと、そう思える道だ。
気持ちよくバイクを走らせているのも束の間、この快走路である427号線はすぐに終わってしまい、いよいよ目的である国道429号線へと入っていく。
さてどんな道が待ち構えているのか、ワクワクしながらバイクを走らせる。意気揚々と臨んだ次の瞬間、蕎麦屋へ続く道がすぐに現れる。
秘境の蕎麦を堪能する
国道429号線に入ってすぐ、右へ伸びる細い道の脇に「あまご村」という看板がある。車1台分ぐらいしかない細い道だが、そこを進んで行った先が蕎麦屋だ。
畑の横を通り、細い道を進む。いかにも秘境っぽい道にワクワクがとまらない。もうこの時点で蕎麦の味は「美味しい」と決まっているのかもしれない。
追い討ちをかけるように、脇を流れる用水路の水が綺麗だからさらに蕎麦の味に期待が膨らむ。
途中、小さな集落なのか民家がポツポツと点在する。とても静かな集落で、バイクで走っていいんだろうか?と罪悪感に駆られながらスロットルをまわす。
そんなことを考えながら走っていると、茅葺屋根の蕎麦屋に到着する。
そば処 大名草庵。十割蕎麦が食べれる秘境の蕎麦屋だ。
いかがだろうか。見るからに美味しそうな雰囲気が漂っている。程よくしかし行き過ぎてないぐらいに手入れの行き届いた外観と庭にセンスの良さを感じずにはいられない。
大名草庵と書いて「おなざあん」と読む。決してダイナソーアンではない。
お店を過ぎたところ右手に駐車場があり、その一角がバイク置き場となっているが、三台ほどしか停めれるスペースはないのでマスツーで行かれる方はご注意を。
僕が到着したのが午後1時半前、店内は満席。店内にはウェイティングスペースがないので、外のベンチで待たせてもらうことにした。
座敷とテーブル席があり、どちらかというと座敷の方が雰囲気が良い。
店員さんも丁寧で愛想良く好感が持てる。美味しい店はこうあって欲しいものだ。
有名ラーメン店などで、よく頑固オヤジ的に偉そうな店主がいたりするが、僕はわざわざ行こうと思わない。偉そうに言われてまで食べても美味しくないと思っている。お客様は神様とは全く思っていなが、人として接する時にお互い気遣いや思いやりがあっても良いとは思う。
さて、店内に入り、座敷の端に通された。メニューはシンプルで、単品の蕎麦が3種類ほどと、セットメニュー、あとは鯖寿司など。
僕は単品の、おろしそばと鯖寿司を注文した。
肉厚の鯖寿司は、酢の加減もちょうど良くこんな山奥で鯖寿司?と思いながら美味しくいただいた。ちなみに、写真に写っているビールは当然ながらノンアルコールビール。
いよいよ蕎麦を食べる。おろしそばの大根は、普通の大根と辛み大根の2種類が出される。最初に塩で食べてみて、と店員に促されるまま塩で食べてみる。蕎麦の風味が鼻を突き抜けて、うまい。
その後、大根を入れたつゆで蕎麦をいただく。またしても、うまい。
こんな時、グルメレポーターなら上手に食レポしてくれるのだろうが、僕にはそんな芸がない。語彙力が足りないが、うまいものはうまい。期待していた通り、いやそれ以上の満足感を味わった。
もし、この記事やYouTubeを見て、蕎麦を食べにいくなら一つお願いがある。
この辺りの集落はとても静かな場所なので、大人数でワイワイガヤガヤ騒ぐのはやめて欲しいし、バイクで行くならうるさいマフラーは遠慮して欲しいと思う。これは僕が勝手に思っているだけで、店側や集落の人たちがどう思っているかは知らないが、なんとなく、そっと行って静かに蕎麦を堪能して帰る、そんな場所のような気がする。
インスタで有名?らしい黒川ダム
さて、しっかり蕎麦を堪能したあとは、目的の国道429号線へ戻ってひたすら走る。
蕎麦屋の細い道から国道429号線に入るとしばらく快走路が続く。これは当たりだ!と思っていると段々と道幅が狭くなり、車一台分の道になってしまう。
ただ、これはこれで悪くない。
前後に車もバイクも人もいない中、木々の間を縫って通る道はゆったりと走ればそれもまた快走路だ。バイクは速く走ることだけが気持ちいいわけではない。田舎に住んでいる人にはピンとこないかもしれないが、日常の喧騒や色んなしがらみから解放されて、そこには自分と愛車だけ。なんて贅沢な時間なんだと思う。
この細い道がしばらく続く。時には急勾配があったり、たまに来る車とすれ違ったり。僕は好きな道だが、初心者ライダーにはオススメできる道ではないと思う。
そのまま一本道をひたすら走ると、少し道幅が広くなり、右へ伸びる道が現れる。そこを右折して「黒川ダム」へ寄り道する。
黒川ダムの手前に「黒川温泉」があるので、温泉付きの人は寄ってみるといいかもしれない。
画像左側にある、湖面に浮かぶ数本の木がインスタで有名らしい。紅葉の肌寒い季節、湖面から発生する水蒸気と湖面に浮かぶ木々が幻想的なのだそうだ。撮影に来ていたオジサンが教えてくれた。
水量により、湖面に木々が浮かんでいるように見えるか、木の下の地面が露出しているかは運次第。僕はたまたま運よく、撮影できた。
再び429を走る
黒川ダムでのんびり景色を眺め、休憩したあとは再び国道429号線へ戻り終着点へ向かい走り続ける。
この辺りまで来ると道幅も少し広くなり、ある程度快適に走ることができる。横に川を眺めながらひた走る。途中でキャンプ場や川遊びスポットなどがあり、車の量も少しだけ増えてくる。夏休みの家族が遊びに来ているのだろう。
そのままひたすら心地よくバイクを走らせていると、銀山湖の湖畔沿いへとつながる。湖を横目にゆっくりと流すのは最高だ。
銀山湖は昭和47年につくられた人口の湖らしい。終着点である朝来市生野町には「生野銀山」がある。なんと戦国時代から開かれていた銀山らしい。「銀山湖」という名前の由来はもちろん生野銀山だろう。
この銀山湖が今回のツーリングの最終スポットである。この先は次第に街が現れ、交通量も増え、生野町へとつながる。
あとがき
今回は国道429号線の一部区間を走ってきたが、個人的には紅葉の時期にまた走ってみたいコースではある。
秘境の蕎麦屋にも行ったが、実はその蕎麦屋の近くに「ことぶき農園」という美味しそうなスイーツが食べれる場所がる。いちごパフェや季節の果物を使ったぜんざいなどのスイーツが食べれるそうだ。
今回は蕎麦を食べたあとの満腹だったので行けなかったが、次回はぜひチャレンジしてみたいと思う。しかしながら、イチゴパフェは食べておきたかったと今更ながら後悔している・・・
- 絶景がある
- 気持ちよく走れる道
- 美味しいものが食べれる
これは僕がツーリングに求める条件なのだが、今回は全てを満たしてくれたコースだった。
黒川ダムや銀山湖に道中の絶景、丹波篠山市からの国道176号線と国道427号線、そして国道429号線、秘境の蕎麦、全てが僕の中では大満足だ。我ながらこのルートを選んだ自分を褒めてあげたい。
この夏、いや秋でも春でも、関西や兵庫県でツーリングスポットを探しているなら一度は行っておきたいオススメのコースだ。ぜひ走ってみてはいかがだろうか。
今後も関西、兵庫県のツーリングスポットを巡って素晴らしさを発信していきたいと思う。