◯◯県といえば「●●」のような象徴的なイメージがある都道府県は少ないが、滋賀県はその少ない都道府県のひとつに入る。そう、滋賀県といえば「琵琶湖」のイメージがあまりにも強烈すぎる。
今回はその滋賀県と岐阜県の県境にある「伊吹山ドライブウェイ」まで行ってきた。滋賀県と言えば琵琶湖、のイメージを覆すまで至らなくても滋賀県と言えば琵琶湖、その次に伊吹山と答えられるぐらいには素晴らしかったのでレポートしていきたい。
伊吹山ドライブウェイ
伊吹山ドライブウェイは、岐阜県不破郡関ヶ原町から滋賀県米原市大久保(山頂)に至る全長17kmの有料道路。料金所は岐阜県だが、山頂は滋賀県に位置するので少し強引だが「関西ツーリングスポット」として紹介したい。
通行料金はバイクだと2,200円。JAFに加入していれば200円割引の2,000円で入ることができる。有料道路としては少しお高いが、値段だけあって道路もキレイに整備されていて走りやすい。ただ、通行料金は現金のみとなっているので、ETCの導入は難しいとしてもスマホ決済やクレジットカードなどには対応して欲しいなとは思う。バイクで現金を払うのは少々めんどくさい。
伊吹山ドライブウェイへは、名神高速道路の関ヶ原ICを降りて向かう。もちろん琵琶湖沿いを走ったりしながら下道を行くのもいいが、今回は高速道路で時短した。関ヶ原ICを降りて一般道を左に曲がり、そのまま真っ直ぐ関ヶ原の町を通り抜けて真っ直ぐ走ると「伊吹山ドライブウェイ」の看板が見えてくる。その交差点を右折すれば料金所に辿り着くのでルートは簡単だ。
事前に知っていると楽しさが増す伊吹山の豆知識
ツーリングに行く時は、その観光名所や土地、地方の歴史や豆知識なんかを事前に頭に入れておくと、何も知らずに走るよりも理解が深まりその場所への記憶や愛着、楽しさが増す。
冒頭で、滋賀県と言えば琵琶湖、と言ったが。ほとんどの日本国民はそう思うだろう。しかしながら一部の登山愛好家なら滋賀県と言えば「伊吹山」と答えるかもしれない。もし、滋賀県と言えば?という質問に対して「伊吹山」と答える人がいたなら、その人は間違いなく相当な登山バカだと思って間違いない。
というのも、伊吹山はある世界記録を保持している。滋賀県最高峰だが標高は1377mしかないし、お隣の岐阜県に行けば2000m級の山があるので標高だけではそこまで有名にはならない。ではなぜ有名なのかというと、豪雪で有名なのだ。これは僕の想像でしかないのだが、日本アルプスなどの登山に比べて伊吹山だと関西の都市部から近く、標高も低いため気軽に雪中登山を楽しんだり練習になるのだと思う。なので登山家は真冬の伊吹山に登る。
1927年2月14日に記録された11m 82cmという記録が、世界最大深雪として100年近くも破られていない。僕みたいな凡人は豪雪といえば東北や北海道をイメージしてしまうが、まさか関西の滋賀県に世界記録があるとは思っていなかった。言われてみると、過去に何度も奥伊吹スキー場(今は名称が違う)までスノーボードに行っていたことを思い出した。確かに雪は十分にあったのだ。
地球温暖化が問題になっている今、おそらくこの記録はもう破られることはないだろうと思っている。
伊吹山の豆知識はまだある。伊吹山は約3億年前に海底火山が噴火してできたとされており、石灰岩が多く山頂ではカルスト地形が見られる。石灰岩層から浸透した水はミネラルを豊富に含む湧水として山麓で有名だ。滋賀県米原市にある泉神社の湧水は名水百選の一つに選ばれている。
また、ドライブウェイ山頂付近に行くと必ず見れると思うが、道路沿いにデカい望遠レンズを装着した、それいくらするんですか?というようなカメラを構える人たちが並んでいる。これは天然記念物のイヌワシを撮影するために集まっている人たちだ。寒い中、じっと耐えて撮影しているんだから、この人たちもまたカメラバカなのかイヌワシバカなのか、伊吹山にはとにかく我々バイクバカのような色んなバカが集まる。あいにく僕が走った早朝にはカメラバカの人たちの姿はほとんど見られなかった。
他にも、古くから薬草の宝庫として利用されており、山麓から山頂にかけて薬草の群生地がある。伊吹山の固有種は9種類あるそうだ。なので山頂手前の駐車場にあるスカイテラスなどでは薬草ソフトクリームなどが食べれるらしい。
山頂へ登る
伊吹山山頂手前の駐車場から、気軽に山頂へと登頂できる。せっかく行ったのなら滋賀県最高峰1377mへ登ってみてほしい。こんなにお手軽に○○最高峰に登れる機会は滅多にないと思う。
登山ルートは、中央登山道と西登山道があり、バイク置き場の横から登るのが中央登山道で最短ルート(約20分)。駐車場の奥から登るのが西登山道で約40分かかるそうだ。ちなみに中央登山道の横には東登山道があるが、これは下山専用なのでご注意を。また、入山協力金300円の募金箱があるので登山する方は登山道の整備や環境保護のためを思ってお金を入れてほしい。ツーリングに行ったなら、その土地のために少しでもお金を落とすのはライダーのマナーだと僕は思っている。
今回僕が選んだのは最短ルートの中央登山道だ。道はキレイに整備されていて、ほぼ階段のようになっている。登り始めてすぐに雄大な景色を見下ろしながら歩くことができる。何度も立ち止まっては景色を眺める、を繰り返すので20分以上かかるかもしれない。
この日は、というか普段を知らないのだが、山頂に近づくにつれて強風が吹いていた。伊吹山という字は神聖な風が吹く山という意味らしい。気温はiPhoneで確認したところ12℃だが、体感温度はそんなもんじゃない。冷たい強風が体感温度を10℃ぐらい下げている感じだ。
息切れしながら山頂にたどり着いたら、360℃パノラマの絶景が待ち構えている。1377mから眺める景色は周りを遮るものがなく爽快この上ない。これを絶景というのだろう。西側には琵琶湖が一望できる。とはいえ、琵琶湖は一望できるほど小さくはないので見えているのはほんの一部だろうが、あらためて琵琶湖のデカさを目の当たりにすることができる。その絶景はぜひご自身の目で見て感じてほしいので、あえて写真は貼らないでおく。
この日は早朝に登頂したので、山頂には山小屋やお店が数軒並んでいるがどこも開いてなかった。おそらく山小屋には宿泊もできるのだろう。あまりにも寒すぎたので絶景を堪能し早々に下山した。
関ヶ原でウナギを食う
下山して準備を終わらせ、バイクのセルスイッチを回すと一発でかからない。2回、3回と試すがかからない。おそらく山頂に登っているわずか1時間ほどの間にエンジンが冷え切ってしまったのだろう。さらにバイク置き場の標高が1260mの位置にあるので、空気の濃度や気圧も影響していると思う。
こういう時、キャブ車は不便だ。FIなら一発でスムーズに指導してるんだろうな、と思いながらチョークを引きながらエンジンをかけるが、やはり吹き上がりが悪い気がする。まあ、下山すれば調子も戻るだろう。
昼メシは、関ヶ原の町にある「魚しげ」さんというウナギ屋さん。ここは事前に調べていて、せっかくなのでたまには奮発して美味しいものを食べることにしたのだ。
どうだこの破壊力。注文したのは、うな重の松で4,070円。うなぎ一匹分で、ご飯の中にもウナギが隠れている。
道路に面したガラス張りの内側で、職人さんが丁寧に炭火でウナギを焼いてくれている。外はカリッと香ばしく、中はフワフワの絶品。伊吹山ドライブウェイの山頂やスカイテラスで昼食を食べるのもいいが、個人的にはそういう所の食事に味はあまり期待できないと思っている。差し障りなく美味しいのだろうが、悪く言えばどこでも食べるようなメニューしかないと思っている。
今回も事前に伊吹山ドライブウェイの食事を調べてはいたのだが、僕の嗅覚を刺激するようなメニューはなかったので、関ヶ原で探したところ、この魚しげさんのウナギを発見したのだ。
おそらく地元でも有名なんだろう。ほぼ開店と同時、一番乗りに入店したが予約席もあったりであっという間に満席に近くなるぐらいお客さんで埋まった。
一般庶民の僕からしたら決して安くはない値段だが、食べる価値はあると思うぐらいオススメなので、もし伊吹山ドライブウェイに行くなら立ち寄ってみてはいかがだろうか。
あとがき
今回、伊吹山に訪れたのは実は2回目で10月の上旬。前回は8月末に行ったが、ドライブウェイの途中で車が横転事故を起こし、通常止めのためドライブウェイには入れなかったのだ。
リベンジは果たせたが、とにかく寒かった。行きの高速道路は早朝ということもあり、凍えそうになりながら走っていた。途中のSAで上着の下にカッパを着込んで走った。
伊吹山ドライブウェイに入っても、標高がグングン上がるので寒さは増すばかり。完全にナメていた結末だ。もしこれからの季節、伊吹山に行かれるなら相当な厚着をして行ってほしい。ちなみに、僕はヒートテック、スウェット、カッパ、冬用のジャンバーを重ね着していたが、それでもまだまだ寒かった。
この伊吹山は僕のツーリングの三大条件を全て満たしてくれた。
絶景も堪能した。快走路も走れた。美味いものも食べれた。総合評価は高い。もっと秋に行けば紅葉がキレイなんだろうが、その時は死ぬほど寒いだろうか僕はやめておく。