バイク乗りにはバイク乗りの、 人それぞれの楽しみ方があるし、道交法を守り他人に迷惑さえかけなければどう楽しもうが自由だ。乗るよりもイジる方が好き、という物好きも僕の知人にはいる。
僕はどうかといえば、もっぱら走ることを楽しんでいる。さらに突き詰めると、ツーリング先で絶景と出会い、見知らぬ土地に新鮮さと刺激を感じ、美味いものを食い、その道中をバイクで走る。それが楽しい。だから、走ると言っても峠を攻めたりスピードを楽しむ、とはまた違う。
僕の現在の愛車は、CB400SF NC31 Version S。通称スーフォアでご存知の通り排気量は400cc(厳密には399cc)だ。中型二輪免許を取得したのは19歳の時。それから数年バイク乗ったが車の免許を取得したのと同時にバイクを降り、48歳にしてリターンした。実に25年ぶりぐらいのリターンだ。
そしてこの秋、リターンしてから4ヶ月で大型二輪免許を取得した。
本記事では、大型二輪免許を取ろうかどうか迷っている人に向けて、僕がなぜ、どのような理由で大型二輪免許を取得しようと決断したのか綴っていきたい。「あ、こんな人もいるんだな〜」と、少しでも参考にしていただければ幸いだ。
これからは排気量マウントを取り放題です。
高回転で回し続けることに疲れを感じた
リターンする際に購入したCB400SFは、26年前のモデルだがエンジンは好調でよく走ってくれている。だからこのバイクに不満を感じたことはない。むしろ愛着が湧いてきて愛おしい。もちろんSSには敵うはずもないが、53馬力のエンジンはそれなりにスピードも出るし、よく曲がり、よく止まり、安定もしていて故障も今までしていない。何も問題なんてない。
ただ、ある時からほんの少し違和感を感じ始めた。リターンして100kmや200kmの日帰りツーリングに行きまくってた時だ。長い直線の快走路や、高速道路を走っている時、バイクが少ししんどそうなのだ。僕のCB400SFは、時速80km、6速で約5,500〜6,000回転ぐらい。そこまで高回転ではないが、エンジン音が高いところでずっと唸っている。何度も幻の7速を求めてギアを上げようとした。
またある時、すれ違う大型バイクはかなりスピードが出ていると思われるのにも関わらず、低音で駆け抜けていく。さらには高速道路で、僕が時速100kmで走っている横を大型バイク2台が猛スピードで抜き去っていった。おそらく150km近くは出ていたんじゃないかと思う。驚いたのはその時の音が、ドッドッドッという低回転域の音なのだ。
これには正直、耳を疑ったが現実をまざまざと見せつけられた気分になった。
やはり高速道路や、長距離では大型の方が楽なんだろうなと。分かってはいたが、改めてそう思わされた瞬間だった。
世界中のあらゆるバイクに乗る権利を手にいれる
仮に大型二輪免許を取得したからといって、大型バイクに乗らないといけない決まりはない。むしろ大型二輪免許を持っているのに、あえて中型や小型バイクに乗っている方が「こだわり」や「個性」があってカッコいいかもしれない。
でも大型二輪免許を所持しているということはだ、いつでも、好きな時に、乗りたければ大型バイクに乗れるということ。要は選択肢が無限に広がるということではないだろうか。どのバイクに乗ろうか種類を選ぶ際に限定が解除され、自由に決めることができる。
あ、あのバイクカッコいいな、あのバイクに乗りたいな、あのバイク欲しいな・・・と思った時に、排気量を気にしなくていいのだ。気にするのはお財布の中身だけ。そして大型バイクに乗ってみて、パワーの違いや取り回しの違いを実際に体験してからどんなバイクに乗るかを決めれるなら、自分にとって本当に最適なバイクが見つかるのでは?と思う。
今のスーフォアでも次に乗りたいバイクが見つからない程度に満足はしているが、あくまでも排気量400cc未満の限定された範囲内での話だ。
世界中のあらゆるバイクに乗る権利がこの手に入る。言い換えると、「世界中のあらゆるバイクの中から自分に最適なバイクを選ぶ権利を手にいれる」ということ。それだけでも大型二輪面免許を取得する理由としては充分に魅力的なのではないだろうか。
できるだけ若いうちに好きなことをしておきたい
僕がたまに顔を出す最寄りの駅前にある立ち飲み屋のマスターは62歳だが、現在大型二輪の教習に通っている。また、僕が大型二輪の教習に通っていた時も、僕より明らかに10歳以上は先輩であろう男性と同じ時間に教習を受けたこともある。やはりそれなりに教習では苦労されていて、もっと若いうちに取得していればよかったとお二人とも言われていた。
大型二輪免許を取るのに年齢は関係ないし、60歳を超えてチャレンジしたことは素晴らしいと思うしカッコいい。ただ、できれば若いうちに取得しておいた方がメリットは多いのではないだろうか。僕ももう49歳なので決して若いとは言えないが、僕の人生では今が一番若い。だからこそ、決断に至ったのもある。
すべてのバイクに乗る権利を得たとしても、体力的に乗ることが厳しい年齢になってしまえば、結局はバイクの種類が限定されてしまう。ならば、今、まだ体力的に色んなバイクに乗れるうちに大型免許を取得した方が良いと思ったのだ。
よく、SSは歳を重ねてから乗ると体がキツイ、乗車姿勢が腰にくるなどと聞く。幸い僕は今のところSSを買うつもりはないのでそんな心配は無用だが、リッタークラスのSSには一度でいいから乗ってその走りを味わってみたいとは思う。
好きなことが自由にできるうちにしておきたい。
大型バイクは何を買うのか
実はこの記事は、本メディアで大変お世話になっているライターの「アサオカミツヒサ」さんの一声で執筆するに至った。CB1000Rの記事を寄稿していただいた際のやり取りで、「大型欲が猛烈に高まっているのでぜひその心境を知りたい」とおっしゃっていたのがきっかけだ。
大型二輪免許を取得しようと決断してから、どのバイクを買おうか迷っていたのだが、このアサオカミツヒサさんの記事を読むまで「CB1000R」は全く選択肢に入っていなかった。今の愛車CB400SFもそうだが、なんとなく、旧車に魅力を感じていて、現行のバイクは今乗らなくても数年後に値下がりしてからでも乗れるじゃないか、と思っていた。
ところがだ、このCB1000Rの記事を読むと、最新のバイクもありかな?と思うようになってきて、CB1000R欲しいな・・・とまで思うようになってきたから困ったもんだ。何が困るかというと、お値段だ。CB1000Rは新車価格もお高いが、現在の中古相場(2023年10月)でもほとんど値下がりしておらず130〜150万円ぐらいの間で取り引きされている。僕は業者オークションの権利もあるが、そこでの相場も対して変わらないぐらいで取り引きされている。
というわけで、CB1000Rは欲しいが、金額的に諦めざるを得ない。では、いったい何を買うのか?
買うとするなら、HONDA好きの僕はCB1000SFか、CB1300か・・・といったところだろうが、まだ決めきれていない。
さらに、これまた本メディアでお世話になっているライターの「Yone」さん、という方に執筆していただいたドゥカティ愛に溢れたこの記事を読むと、ドゥカティにも心が揺さぶられる。パニガーレV4なんて、一度は跨ってみたいものだ。
世界中のあらゆるバイクに乗る権利を得てしまうと、選択肢が多すぎて決めきれない。これはこれで困ったもんだ。
もし僕が、今の愛車CB400SFを手放してしまったら、長い長い相棒探しの旅に出ることになるかもしれない。最悪なのか最高なのか分からないが、終着点が見えない旅は不安でしかない。
取っておいて損はない
もし本記事を読んでいる貴方が大型二輪免許を取得しようかどうか迷っているなら、ありきたりの言葉ではあるが「取れるなら取っておいて損はないから、とりあえず取れば?」と言うしかない。
僕はリターンしてから、日帰りで行ける程度のツーリングしかしていない。泊まりで行くこともあるが、距離的には日帰りで行ける距離のツーリングだ。でも今後は、もっと遠くへ、たとえば北海道や九州へ1〜2週間かけてツーリングに行くとか、富士山の麓までキャンプツーリングに行くとか、そんなロングツーリングに行きたいと思っている。
そんな時、もし大型バイクに乗っているなら楽に走れるんじゃないかと思う。もちろん250ccだろうと400ccだろうと、行けることは行ける。ただ、道中の快適さが圧倒的に違うだろうと予想するのは容易だ。
これはちょっとした余談だが、実は大型二輪の教習に通って、安全面の意識も強くなったし、ライディングも少し上手くなったのでは?と思っている。教習所内とはいえ、車両も大きく車重も重い大型バイクを乗りこなすにはそれなりのテクニックが必要で、それらを指導員が丁寧に教えてくれるんだから少しは上手くなっているはずだ。僕のCB400SFは乾燥重量で200kg近くあるが、大型の教習に通ってから心なしかCB400SFの取り回しが楽になったような気がする。
取っておいて損はないが、取らなくても損をするわけでもない。どっちでもいい。でも、教習所に通う経済的な余裕と時間があるなら、僕は大型二輪免許を強くおすすめしたい。
〈追記:2023年10月20日〉
本記事を公開した直後に、ライターのYoneさんから、また魅力的な記事を寄稿していただいた。ますますパニガーレへの憧れが強くなる記事だ。