冬はバイクをどのように保管しているのか【北海道バイク事情】

北海道がバイク天国であることは、道民ライダーも道外ライダーも異論がないところだろう。まっすぐな道路と海と山の風景、さらに渋滞知らずの快適走行と、北海道にはライダーが望むものがすべてある。

しかし北海道には、冬に走れないという最悪の欠点がある。

では、道民ライダーは冬の間何をしているのか。札幌在住のSR400オーナーの著者が、冬の北海道のバイク事情を紹介する。

目次

冬の北海道をバイクで走るのは無謀

アサオカミツヒサ

北海道の冬はシャレになりません。自動車でも簡単に事故を起こすので、バイクなんてひとたまりもありません。

冬の北海道をバイクで走る猛者(もさ)は存在する。まず郵便局員さんだが、真冬の凍結路面でもカブでスイスイ走っていく。そしてごく少数のチャレンジャーたちは、バイクのタイヤにスパイクを打ち込んで、エンジンを冷まさない工夫をして、防寒着を着込んで走っている。

しかしこれはとても危険だ。

凍結路面では「やばい」の「や」すら思う間もなく転倒するだろう。普通に走っていて、次の瞬間に目の前に凍った道路がある感じだ。

カブに乗っている郵便局員さんたちも頻繁に転んでいる。

私の北海道経験からこう言わせてもらいたい。「普通のライダーは冬の北海道はバイクで走るべきではない」と。上から的で申し訳ないのだが、ライダーに北海道で事故って欲しくない気持ちを理解して欲しい。

バイク店は冬にバイクを預かってくれる

走らないバイクほど邪魔なものはない。例えば私は、バイク・シーズンは自宅マンションのバイク置き場にバイクを置いているが、マンションの管理組合から駐車料金を取られる。バイクに乗らない期間にバイクを置いておけば、お金だけが消えていく。

また、いくらバイクにカバーをかけているとはいえ、バイクを何カ月間も外に置いておくと劣化を早めてしまう。バイクに対してのみ潔癖になる私は、SR400にホコリや砂が付着するのがとても嫌だ。

だから道内ライダーの多くは、冬期間はバイク店にバイクを預ける

そして北海道のバイク店の多くは、冬期バイク預かりサービスを提供している。

1シーズン1.5万円ほど

私はバイクの整備をしたくないので、しかもその技術もないので、バイクは必ず整備を丸投げできる店で買うようにしている。今持っているSR400も、その前に乗っていたNSR250Rも、全国展開しているバイク店「R」で買った。

Rももちろん冬期バイク預かりサービスを提供していて、料金は15,000円を切るくらい

ほかの道内バイク店も大体それくらい。

冬期バイク預かりサービスの内容

冬期バイク預かりサービスの期間は、11月くらいから翌年の4月くらいまでの計6カ月ほど。それで1.5万円。

Rは大きな倉庫を持っていて、そこに顧客のバイクを大量に保管する。そのときバッテリーを外してくれる。

倉庫に大量保管するとなると、ほかのバイクと接触させてしまったり、立ちごけさせてしまったりといった心配があるが、人為的なミスでバイクに傷がついたら補償してもらえる。ただし、地震が起きて倉庫内のバイクが倒れて傷がついた場合は、補償されない。このことは、預ける手続きをするときに忠告される。

高いか安いか…ちょうどよいのではないか

これだけのサービス内容で6カ月1.5万円は、高いと感じる人もいると思う。6カ月で1.5万円だから1カ月2,500円となり、これはマンションのバイク置き場の料金より高い。

ただ私は、6カ月1.5万円は妥当な金額だと思っている。マンションのバイク置き場は雨ざらし(北海道だと雪ざらし)になるが、Rの倉庫は屋内保管。これだけで十分、SR400を労(いた)わることができていると思う。

さらに、バイクを預けるときに、オイル交換やグリスアップ、タイヤ交換を依頼することもできる。もちろん別料金だが、こうしておけば春にグッド・コンディションで乗り始めることができる。

ガレージ持ちは北海道では珍しくない

北海道ライダーのなかには、冬期にバイクをバイク店に預けない人もいる。それは自宅にガレージがあるからだ。

「バイク用のガレージを持っているなんて、どれだけカネモチなんだよ」と思うかもしれないが、北海道では意外にそうでもない。

札幌の隣の江別市で1坪20万円~土地が安いからガレージを持てる

札幌市中央区でガレージ付きの一軒家を持つことは庶民には難しいだろう。しかし札幌の隣の江別市というところなら、住宅地の土地の平均価格は1坪20万円くらい。庶民の一軒家であれば30坪もあれば「そこそこ」満足できると思うので、それなら土地代は600万円(=1坪20万円×30坪)で済む。

土地がこれだけ安いから、一軒家を建てるときガレージをつける余裕が生まれる。バイクをこよなく愛する、普通の真面目な労働者でも、北海道なら簡単に豪華な家を持つことができるのだ。

そして江別市なら、札幌の中心地までバイクで30分くらいだから十分通勤圏だし、買い物に困ることはない。

ガレージは冬がよい~バイク酒最高

バイク用のガレージは相当よい。私のバイク仲間には3人、バイク用ガレージを持っている人がいて、そのすべてに訪問したことがあるのだが、3回とも心の底から「うらやましいなあ」と思った。

そのシチュエーションのすべてがうらやみの対象になるのだが、最もうらやましいのは冬だ。

ガレージ持ちは冬期間、自分のバイクをそこに置いておくのだが、その間、バイク酒を楽しめる。バイク酒とは、バイクをながめながらアルコールを飲むことであり、これはバイクに乗ることの次くらいに楽しい。

ガレージを持たない私でも、バイク酒はよくやる。「今日は乗らない」と決めた、晴天の日の昼間、バイクを洗車しながらビールを飲む。酒も洗車も進む。

ガレージを持つ道民ライダーは、この楽しいイベントを真冬に行うことができるのだ。

妄想が進む冬

さて話をバイクの冬期預かりに戻す。

私のような庶民派道民ライダーは、冬期はバイク店にバイクを預けるしかないのだが、ではバイクが手元にないなかで、つまりバイク酒すらできないなかで何をすればいいのか。

それは妄想である。

「次の春は大型教習所だ」妄想

私はいわゆる中免しか持っていないのだが、冬期になると必ず「よし、次の春こそ大型免許を取りに行こう」と決意する。

なぜか。それは冬は自分のSR400に乗ることも触ることもできないので、バイク雑誌やインターネットでバイクのことを調べまくるからである。

バイクを知れば知るほど、やっぱり大型バイクに魅力を感じてしまう。それで「やっぱり大型バイクが欲しい」→「よし春には大型教習所だ」となるのだ。

ただし、春になってSR400に乗り始めると「うーん俺にはこれで十分」と思えてしまい、大型バイク熱が冷める。

バイクのプロも妄想する

ある日私は、バイク店の店長に、冬はいつもバイク関連の妄想ばかりしてしまうと告白した。すると店長も「私もそうです、妄想ばかりです」と言った。店長の場合は、用品関連の妄想が止まらなくなるそうだ。

この店長はVF1000RとZ1-RとW3の3台も持っているので、冬でもほかのバイクを欲しいと思うことは少ない。その代わり、用品に想いが馳せるのだ。

そしてバイクに乗れないから妄想は膨らむ一方で、結局は皮ジャンだのサイドバックだのを通販で買ってしまう。「わはは、冬のほうがバイク関係にお金を使っていますよ」と笑っていた。

まとめ~道民ライダーも道外ライダーも幸せはトントン

道外ライダーのなかには、道民ライダーをうらやむ人もいるはずだ。何しろ道民ライダーは、北海道まで移動することなく北海道を走ることができるのだから。

しかし北海道は、ライダーに最高の半年間を提供する代わりに、最低の半年間を提供する。バイクに乗れないなんて最悪だ。

そうやって考えると、道民ライダーと道外ライダーの幸福度はトントンなのかなと思う。

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この記事を書いた人

●著者紹介:アサオカミツヒサ。バイクを駆って取材をするフリーライター、つまりライダーライター。office Howardsend代表。1970年、神奈川で生まれて今はツーリング天国の北海道にいる。
●イラストレーター紹介:POROporoporoさん。アサオカの親友。

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